この愛に泳ぎ疲れても
この曲がリリースされた時期は、私的には最も安定していた時期だと思う。それを下支えしていたのがこの曲を軸とした感傷的シングル連発。つまり、もう少し♪→本曲→こんなにそばに♪→just believe in♪というマイナーコードの連発だった。一般的にZARDと言えば「負けないで」のようなパワーソングを代名詞として挙げがちだが、ZARDの真骨頂はこのようなマイナーソングにあると思う。坂井さんの声質は、儚いサウンドに似合う憂いを帯びた魅力があるからだ。
特に本曲に関しては、前後の短調ソングの中でも一際異彩を放っていた。一番の要因はテンポの違いだろう。初めてこの曲を聴いたのは、確かFMのランキング番組だった。イントロのもの悲しさを聴いたときは、もう少し♪路線かな?と思ったが、左右に揺れるキーボード音を皮切りに怒涛のテンポで、サウンドが展開する。この時の私の衝撃は相当なものだった。ドラマティックなギターソロや坂井さんの搾り出す絶叫じみたフレーズ等息をつかさずラストまで怒涛の如く展開される攻勢。この時間差テンポ攻撃はセカンドアルバムでも試験的に試されていたがそれが、ものの見事に昇華したのが本曲では無いでしょうか?
アルバムの構成でも、怒涛のマイナーポップス→スローバラードというような、テンポ時間差でくすぐる演出というのは実はZARDの隠れた魅力だったのでは?と思う。