後半はシャンソン集。時折リュートや楽器だけの演奏がはさまれていて、耳も疲れない。特に器楽だけの演奏を聴いていると、バッハがこういう音楽を肥料にして作曲していたのだと実感できる。ーー私たちはこれまで、バッハをモーツァ㡊??トやベートーヴェンの源泉とみなして疑うことはなかった(学校では「音楽の父」と教わった)。でも、この矢印を逆向きにして、ルネサンス音楽を総合したバッハを考えるとき、古楽器による演奏は単なるブーム以上の価値があることを認めざるを得ない。
デュファイにはじまったとされるルネサンス音楽は、その後半には30声、40声というとてつもない音楽にまで「発展」する(トマス・タリスの40声の「御身のほかにわれは」は、現在でも時々演奏されCDで聴くことができる)。バロックの時代は、いわばルネサンスの語法でやれそうなことをすべてやり尽くしたときに生じた。デュファイからおよそ300年後、バッハの登場によっていよいよ私たちの音楽の時代の幕が切って落とされる。
そのバッハからおよそ300年、20世紀までにやれそうなことはすべてやり尽くした今、私たちの21世紀はどこへ向かおうとしているのだろうか? それが新たなバロック時代への幕開けであってほしい、と私は思っているのだが。
DVDになって欲しい。DVDになったら即買いでしょ。