にごりえ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)
同じシリーズの「たけくらべ」と共に購入しました。訳文はこちらの方が現代的で読みやすいという印象です(その辺りは個人の好みだと思います)。現代語訳は本当に読みやすくてあり難い。自分としては、訳者の後書きもこちらの方がよいです、一葉を更に読みたくなります。
それにしても、これだけ様々な立場の人間の心を描くことができる一葉の技量というのは、本当にすごい。一葉の作品は写実文学ですから、「にごりえ」を始め、悲しい話が多いですが、現代人も共感できる人間の心の不可思議さを描き出してくれていて、非常に惹きつけられます。
日本が誇る天才女流作家の名作、若い女性に特に読んでいただきたいと思います。
たけくらべ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)
独特の文体・表現は残しつつも読みやすく現代語訳されている感じがしました。
内容を理解しやすくするにはもっと砕けた方がいいんでしょうが、そこは原文の雰囲気を残すために
あえてそうしなかったんだろうと思います。
ガッツリ読むスタイルが苦手な自分でもすっきりと読み終えることができ、内容も理解しやすかったです。
とりあえず樋口一葉の作品を読んでみたいという人にはおすすめの一冊です。
花嫁吸血魔 [DVD]
若く美しい、前途ある女性が周囲の憎嫉によって自殺に追い込まれる。彼女は妖術を使う祖母の手によって蘇り、毛むくじゃらの吸血魔と化して復讐に赴くのだった。
主演は大女優・池内淳子。当時新東宝に所属していた池内は社長・大蔵貢の反対を押し切って結婚。それが破れて戻ってきた池内に用意された役が、この吸血魔の役だった……というのが定説ですが、嫌がらせをするんだったら最初から起用しないでしょう。ある意味、女優・池内淳子の覚悟のほどを感じさせる鬼気迫る作品で、テンポの良いストーリー展開と併せて、観て損のない作品です。
ちなみにこの作品、映画公開後に池内淳子によってフィルムが焼却されたとの噂が広がりました。それぐらい長い間、まともに観る機会がなかった作品なのです。
頭痛 肩こり 樋口一葉
2010年4月9日に井上ひさし氏が亡くなった。たいへん残念である。井上ひさしの戯曲は可能な限り読み、ときどき舞台も見たけれど、いちばんの傑作は1984年にこのこまつ座旗揚げ公演で初演された本作である。
登場人物がすべて女性という意表をつく設定で、樋口一葉の生活と人生を織り込んだ作品は、スキのない傑作である。毎年、お盆の晩に樋口家を訪れる幽霊・花蛍(ほとんどの公演で新橋耐子が演じていたが、さすがに最近は他の役者さんに代わった)を狂言回しにした趣向が秀逸。1984年の初演時の舞台を収録した映像をNHKからDVDで出してもらえないものでしょうか(BS2で再放送されましたけれども)。渡辺美佐子、香野百合子、上月晃、風間舞子、白都真理、新橋耐子の強烈な、パワフルな舞台が忘れられません(演出は木村光一)。
登場人物がすべて女性という趣向は、井上好子プロデュース、つまり女性がプロデュースする芝居だからと井上ひさしは考えた、言ってみれば井上ひさしが井上好子にプレゼントした芝居なのだろうと、娘(三女)の石川麻矢が書いている(『激突家族』中央公論社、1998)。女性だけのキャストという趣向は『マンザナわが町』にも引き継がれました。これも悪くない作品ですが題材が特殊で地味なためか、再演されていないようです。
にごりえ・たけくらべ (新潮文庫)
一葉さん(‘さん’でお呼びして失礼かも・・・)の小説の中で、最も写実的な描写が高い作品だと思います。
新開地、銘酒屋菊の井のお力を主人公としています。お力は真面目な独身の客・結城朝乃助をを愛していますが、自分のために零落して妻まで捨てた蒲団屋・源七の刃にかかって死んでしまいます。
源七には愛想づかしをしたわけではなく、源七とその家族のために別れたのですが・・・遊女になりきれない女の真情と深刻な現実をリアルに描いた作品です。