葬儀の日 (河出文庫―BUNGEI Collection)
とりあえず、著者の人間関係に対する捉え方に強く惹かれるものがある短編集(中編集か?)である。どうも人間関係というものを支配するもの支配されるもの、極論を言ってしまえばSとMの関係として解釈しようとする傾向があるように思う。私は谷崎潤一郎の『痴人の愛』に同じような感触を得たのだけれども、他の人はどう思うだろうか?
とりわけ、表題作の『葬儀の日』はあらゆる点で素晴らしい。分量的にも過不足なく、無駄が一切なく、強引なところもない。素晴らしいではないか。
ただし、他の二作品はこけおどし感があったような気もしないではない。まあ、それが残念と言えば残念だが、『葬儀の日』だけのために買うのも一興だろう。それだけで元は取れる。
奇貨
非常に緊張しながらも、気持ちを集中させて、一気に読み切りました。こう言うと、何を今さら、と、きっと叱られると思いますが、やはりキャリアのある作家は、文章の隅々までしっかりと考えられていて、その上構成も確かで、本当に立派だな、と素直に思います。本田のセクシュアリティーに関しては、予想した通りの「真相」でした。七島の下着を干すのに戸惑う場面や、ケイタイの件がバレバレであるのに気づかないところには、笑いました。でも、最後の結末は、どこか、すがすがしい気持ちで読み終えました。『友愛小説』という肩書きにウソはありませんね。おそらく、モデルとなった人物はいないのではないか、と考えます。新潮社装丁室の優れた仕事には、いつも驚かされ、今回も書籍の内容とピッタリだ、と溜め息をつきました。(ただ、帯に印刷されている、惹句は、これでよいのか知らん?)もう、今は、著者の次作を待つのみ。
ナチュラル・ウーマン [DVD]
はっきり言って、映画としてはつまらない。
今やケラリーノ・サンドロビッチ夫人となり、テレビの露出が減ってしまった緒川たまきの豊満な乳房を拝めるだけでもよしとしなければならない。
それにしても廉価盤は出ないのであろうか?
源氏物語九つの変奏 (新潮文庫)
小池昌代の描く「浮舟」しかまだ読んでいない。
浮舟の苦悩が手に取るように伝わってきて、わたしは源氏に出てくるあまたの女性のなかで浮舟がいちばん好きだけれど、
これを読んでもっと好きになった。
ナチュラル・ウーマン (河出文庫)
こんなに痛い恋愛はないのかもしれません。好きで好きでたまらないのに、一緒にいるとお互いの身を削っていくような恋愛。身体も心もヒリヒリするような交わり。こ気味よく展開される甘くて痛い会話。
どれも読んでいてきりきりするような痛さを伴うのに、なぜかうっとりとしてしまう。読みながら彼女たちの関係にどこか憧れをもってしまう。それはたぶん彼女たちの関係がとてもピュアだから。日々の生活で忘れてしまいそうなくらい、痛いほどの純粋さ。
おばあちゃんになっても、私は本棚からこの本を取り出して、うっとりと彼女たちの関係の中にヒリヒリとしながら夢を見そうな気がします。