NHK少年ドラマシリーズ つぶやき岩の秘密 [DVD]
オールロケ(フィルム撮り)による、じっくりと腰を落ちつけての制作により、どこかのんびりとした原作(当時、新潮社より刊行)のその味わいは残しつつ、さらにサスペンスフルに、そして『大人になるということ』にセットでついて来る、哀しみや切なさをも描ききった脚本、そして演出に脱帽。脚本の鎌田敏夫氏としては、「飛び出せ!青春」終了後、「太陽にほえろ!」のジーパン刑事編と(オンエア上では)同時期の作品であり、氏としてはややダークな、そして叙情的な面が強く出た作品となった。また、少年ドラマを支えた演出家のひとりである佐藤和哉氏のこの演出の手法は、翌年の「ユタとふしぎな仲間たち」(芸術祭受賞・DVD発売済)へと結実することになる。音楽は、近年再評価の声が著しい、ピコこと樋口康雄氏。石川セリのけだるい歌声が耳に残る、主題歌「遠い海の記憶」と共に、DVDでここに復活です。
孤高の人〈上〉 (新潮文庫)
かなりの分量だが、内容は面白い。一気に読める。登山をする人なら尚更だ。
しかし、共感できない。違和感だけが残る。
小説にはモデルになった人物がいる。
主人公の加藤文太郎はもちろんだが、宮村もその1人だ。
遭難時のパートナーとして徹底的に自己中心的で無謀な若者として描かれている。
しかし、実際は、だいぶ違う。
加藤自身の山行記録「単独行」や当時の文献、同行者の談話を少し調べれば分かることだ。
宮村のモデルである吉田は、加藤に匹敵する実績と力量を持つ登山家であった。
そして、加藤とパートナーを組んでの登攀も初めてではなかった。
実力を見込んで加藤から山に誘われたものだった。
そして、難易度の高い冬山登攀を成功させ、お互いに謙虚に称えあっている。
まさしく信頼できるパートナーであった。
加藤自身も孤独を好む社交下手のように描かれているが、そうではなかった。
チームで上ることも何度かあったし、不慣れというほどではなく、むしろうまくやっていた。
遭難時の槍ヶ岳でも、あかたも急に4人で登ることになったように書かれているが、それは最初からの計画だった。
そして天候は晴れるから行ける、との判断には加藤も加わっていた。
作者は小説の中で遭難の原因を吉田1人にあるかのように書いているが、なぜ事実に反してまでここまで彼を侮蔑的に書く必要があるのだろうか。
小説では作者の意図に合わない都合の悪い事実はすべて隠されており、一言も触れられていない。
「孤高の人」という表題に付けた通り、加藤はあくまで孤独でなければならず、絶対に穢されてはならぬ存在だったのだろうか。
聖職の碑 [DVD] SVBP-45
低体温や結核で具合が悪くなっていく役の顔色がどんどん悪くなっていくのですが、最近の映画は病気だろうが凍死だろうが血色がいいまま死んでいくので逆に新鮮です。
それからこの時代でもまだ士族とか身分にこだわりがあるのが興味深い。
栄光の岩壁〈上〉 (新潮文庫)
戦前に幼少期を過ごした竹井岳彦は18歳のとき八ヶ岳で遭難し、凍傷によって両足先の大半を失う。足を奪われながらも強烈に山に引きつけられる岳彦。鴨居からロープをつるしての簡単な歩行訓練から始め、徐々にリハビリを重ねる。やがて”ない足”を蘇らせて、未登攀の岩壁を次々に征服し、日本人として始めてマッターホルン北壁を制覇する。彼にとっての登山の理由とは「そこに山があるから」という自然への征服欲だけでなく、半人前の足しか持たない自分が一人前以上の力を出せることを証明するための自己征服欲求があった。戦後の荒廃した空気の中でも熱くたぎる青年の血を感じることができるだろう。山岳小説の傑作。
八甲田山 完全版 [DVD]
史実を脚色した原作を映画化したものとしこの映画は大変素晴らしいものだと思います。私は実際この映画から八甲田山雪中行軍遭難事件について興味を持ちました。当時は以外にも新聞が民主的で天災の面を伝える一方、人災の面も大きかったと伝えたことや、またそれに反し軍はこの事件を天災によるものとし美談化したこと、山口少佐死亡が謎とされている話等々・・・。
悲劇をもとにして伝えるメッセージをしっかりと持ち、映画全体を通して見る側に訴えかけるというのは言うは安しですが、この映画のように実際の舞台で撮影することで説得力をもたせるというのは成功していたと思います。それだけ映像が真にせまって見ている側として最初から最後まで引き込まれっぱなしでした。