最強の経済学者ミルトン・フリードマン
2006年12月に亡くなった、20世紀後半最大の経済学者ミルトン・フリードマンの人生・思想を、歴史的背景や学術的な側面も十分に踏まえた上で、ジャーナリストらしく分かりやすく解説した伝記。主に20世紀前半最大の経済学者ケインズとの対立を軸に描かれている。
小さな政府を標榜し金融政策を重視するフリードマンと大きな政府・財政政策のケインズ。つまりマネタリストとケインジアンの対立。学会ではもはやケインジアンという言葉は死語なのかもしれないが、現実の制度の理解においては、この対立軸の理解は現在でも不可欠である。これらの経済学者の主張は、言語や歴史的背景の異なる日本においては、その結論だけでは理解できない部分も多い為、本書のような秀逸な伝記の存在は大変にありがたい。
本書では、フリードマンの思想がレーガンやサッチャーの経済運営に与えた多大なる影響について詳しく書かれている。それは同時にそれらの政策を模倣した橋本内閣の金融会計ビッグバン、小泉内閣の構造改革において、彼の思想が理論的背景になっていたことを意味する。このような視点から本書を読むと、この10年の日本の経済政策に何が起こったのか良く理解できる。多少の経済学の知識があれば読める本なので、多くの方にお勧めしたい。
この世で一番おもしろいミクロ経済学――誰もが「合理的な人間」になれるかもしれない16講
ミクロ経済学と聞くと、言葉のイメージだけで敬遠してしまっていましたが、苦もなく完読できました。難しそうで積ん読で終わってしまう本に比べて、何倍も価値がある本です。
経営戦略論もいろいろな本が出ていますが、理論ばかりの本は読めないですね。「女子高生ちえの社長日記Part-4」も同じ意味で、誰でも完読できる良書だと思います。
ヤバい経済学 [増補改訂版]
経済学というと、インフレがどうだとかプライマリーバランスがどうだとか、
門外漢にはよくわからないし、あまり興味をそそられるものでもない。そ
ういう人に対しても、経済学者が抽象的理論を身近な事柄にわかりやす
く置き換えての入門書等がさかんに出版されてはいるが、それもいまい
ちページをめくる手が進まない。
本書「ヤバい経済学」がよってたつ「経済学」とは、お金の話にとどまらな
い。副題に「世界の裏側」とあるとおりこれは、人間の営みの集合体であ
る社会の中のあらゆるもののひっぺがえし、そこに隠れている人が「通念」
として信じていたものとはまた別の、ある「インセンティブ」と他のそれとの
インタラクティブな関係を、解きほぐしていこうという試みなのだ。
だが、それだけでは「ヤバい」ことにはならない。近年日本で「ヤバい」は、
若者言葉で「かっこいい」とか「すげぇ」という意味で用いられているが、自
らそう豪語する本書に「ヤバい」ところがあるとすれば、それはその着眼点
にある。増えると思っていた犯罪件数が減ったのはどうして?銃がある家
とプールのある家、子供にとってはどちらが危ない?や、学校の先生と大
相撲力士に共通点はある?など、おそらくこの著者意外にはだれも思いつ
かないだろうし、たとえ思いついても記憶のゴミ箱にすぐさま捨てていたで
あろうものを目ざとく拾い上げ、研究対象にする。
それだけに、おそらく本人たちはそのヤバい着眼点から導き出せた結果
の方も、「ヤバい結果」だと感じて面白がっているかもしれないが、例えば
「子育て」についての章の結論は、もう半世紀以上前に社会学のブルデュー
がやっていることの応用問題の域をでない。
だがそれを鑑みても、その目のつけ所の「ヤバさ」だけを堪能するために
読むのも損はない。ちなみにこちら100p以上者増補版では、著者二人の
ブログでの文章も掲載されている。もちろんこちらでも相変わらず目のつけ
所がヤバい、はず。
インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実 [DVD]
2008年のリーマンショックに関して、ニュースを見ながら何となく「サブプライムローンとかいうのが原因で世界的に景気が悪くなったんだ。」と思っている方もいると思います。
又は、新聞の内容だけでは良くわからず専門書を手にとって深く勉強し、理解を深められた方もいらっしゃると思います。
私はニュースを見てもCDSとかさっぱり分からず、本でも勉強しましたが、何となくわかった程度でした。
しかし、この映画はその事件の当事者にずばずばインタヴューを仕掛けて行きます。(問い詰められて、どもる様子が痛快!)
当時の映像となぜ金融危機が発生したのかを分かりやすく解説しているので、知識が全くない人にも、深い知識を持った方にも是非見て頂きたい作品です。
確かに取材を仕掛ける人物は偏っていて、全体としての印象はフェアではないと思いますが、我々日本人にとって近いようで遠いアメリカで起きた金融危機にズバッと切り込んだ本作はリアリティを伴って、非常に新鮮に映ると思います。