あなたにあえてよかった―ホンジュラス国際緊急医療援助隊 (心の絵本)
今から10年前の98年10月にハリケーン・ミッチの被害を受けた中米ホンジュラス。このとき、日本の陸上自衛隊は被災地へ向かい、初の国際緊急援助をおこないました。
現地での援助活躍やホンジュラスの人々と自衛隊員たちの交流などについて、イラストと共に紹介したのが本書です。
自然災害の被災地への派遣とはいえ、自衛隊の海外派遣については議論が続いているのですから、本書が取り上げるホンジュラス派遣を手放しで評価できるのかどうかはなんともいえません。
しかし私自身、一介の観光旅行者としてかの国を訪れた際、現地の人々に日本人と知れた途端に、「ミッチのときには本当に世話になった」と感謝されたものです。そんな小さな体験からも、現地の人々に物質的にも精神的にも自衛隊派遣活動は掛け値なしに大きな感動をもたらした取り組みだったということが分かります。
そして本書では、災害によって疲弊困憊している人々が、それでもなお、日本の援助に対して精一杯の謝意を示そうとする姿が描かれていて胸を打ちます。助け合い、いたわりあい、そして見返りを求めない。そんな人々の純朴で清明な心もちに、涙があふれて仕方ありませんでした。
若い隊員が「話に聞いている昔の日本人は、きっとこんな人たちだったんじゃあないか」と思わず言葉をもらしたとありますが、ホンジュラスの人たちは中南米の中でも概して穏やかな国民として知られ、かつて確かに存在して今は失われてしまった日本人的奥ゆかしさを想起させるところがあります。それがハリケーン・ミッチ直後に訪れた自衛隊員たちにまるでタイムスリップしたかのような感覚を与えたということなのでしょう。
被災者たちを助けにいって、確かに隊員たちは何かをもらって帰ってきた。
そんな思いをさせる一冊です。
関連書:「グラフ国際緊急援助隊 ハリケーン災害のホンジュラスへ自衛隊初の出動 記録写真集」防衛ホーム新聞社