巨匠たちのハリウッド 生誕百周年 ニコラス・レイ傑作選 危険な場所で [DVD]
長らく過小評価されてきた隠れた名画の代表格ともいえる『危険な場所で』。52年の公開当時は批評家をはじめ、シナリオの一部に大幅な変更が加えられてしまったために監督のニコラス・レイ、脚本家のA.I.ベゼリデスらにも不幸にも疎まれてしまった呪われたフィルムといっても過言ではありません。しかし、そこは鬼才ニコラス・レイが精魂込めて撮り上げたこだわりの作品に相応しく、その素晴らしさ、美しさの前にはやはり感動を禁じ得ません。ちなみにエンディングにまつわるシナリオの変更は主演スター二人が切望したものとも言われ、そういった意味ではこれがレイ監督のみならず、携わった人々全てにとって入魂の作品だったことがわかります。
犯罪捜査にひたむきに没頭するが故に心が荒んでしまった一人の刑事。暴力沙汰を重ねるうちに上司に睨まれた挙句、遠く雪国の殺人現場へと飛ばされる。そこで彼が遭遇した事件とは、そして出会った人々は・・・。主人公の刑事を『生まれながらの悪女』、『太平洋航空作戦』、『キング・オブ・キングス』などでレイ監督とコラボした名優ロバート・ライアンが熱演。先ごろニューヨークで大々的に回顧映画祭が開催されるほど再評価の高まっているフィルム・ノワールの寵児ロバート・ライアン。本編はニューロティックかつ悲しげな彼の魅力が最大限に活かされたロバート・ワイズの『罠』や『拳銃の報酬』、フレッド・ジンネマンの『暴力行為』、マックス・オフュルスの『魅せられて』、アンソニー・マンの『裸の拍車』あるいは『最前線』、アンドレ・ド・トスの『無法の拳銃』などと並ぶ代表作として昨今すっかり認知されています。この刑事と出会うことになる訳ありの女性に扮したアイダ・ルピノも素晴らしい。独立プロジェクトを立ち上げ、『ヒッチハイカー』や『二重結婚者』などの秀作ノワールを自ら監督してしまった才女は、ラオール・ウォルシュの『ハイ・シエラ』やロバート・アルドリッチの『悪徳』同様にここでも演技者として類希なる才能を発揮しています。背負ってきたものが大きすぎる孤独な登場人物二人が出会うとき、切なさと労りの美しきオーラがこのノワールに新たな輝きを付与します。ジョン・フォード一家の名パイプレーヤー、ワード・ボンドも緻密で繊細な名演を見せ、これは彼の代表作の一つと言ってもいいでしょう。
イギリス人作家ジェラルド・バトラーの『Mad With Much Heart』の映画化にあくまでもこだわったレイ監督のダイナミックかつ詩的で感傷的とさえいえる映像美はまさに本作に極まりといった出来栄え。『夜の人々』、『孤独な場所で』、『大砂塵』、『理由なき反抗』、『ビガー・ザン・ライフ』など、レイ監督の他の目立つ作品の陰に隠れがちな本編ですが、これはそれらと同様かあるいはそれ以上の素晴らしさを持つ作品であることに疑いの余地はありません。当時としては珍しいハンドカメラを駆使して臨場感あふれる都会の闇を映し出したと思いきや、一転して絵画のように麗しくも寒々しい山に抱かれた片田舎の雪景色を縦横無尽に活写するさまは圧巻。モノクロフィルムを扱わせたら天下一品の名カメラマン、ジョージ・ディスカントの腕前も冴え渡っています。加えてヒッチコック作品でもお馴染みの映画音楽の巨匠バーナード・ハーマンによる金管楽器とヴィオラを駆使した大胆かつムーディな音楽の素晴らしさは特筆に価します。
演出、脚本、演技、撮影、音楽と映画を作り上げる要素の全てが力強く詩的な本編は時代の流れと共に再評価が高まってきた貴重な作品。名匠マーティン・スコセッシは兼ねてからこの『危険な場所で』を高く評価し、これが自作『タクシードライバー』のインスピレーションの源であると語っているほどです。今日では類い希な映像作家ニコラス・レイの代表作の一つとして、また50年代フィルム・ノワールの一大傑作としての評価を揺ぎ無いものにしようとしている本編の日本におけるDVD化を心から喜び祝福したいと思います。映画データベース「They Shoot Pictures, Don't They?」が選出した2012年度の「最も偉大なフィルム1000選」にエントリーを果たしました。
アンブレラ・アカデミー ~組曲「黙示録」~ (ShoPro books)
ここに書かれている方々はとても海外のコミックに精通していると思われるので内容にかなり厳しめにかかれていると思います。
むしろ自分はでかでかと帯に記された「アイズナー賞受賞」と、それを受賞した作品を出版した編集部側の思惑を考えたりしました。
ジェラルド・ウェイの最初のコミックであるこの作品は、このクオリティはやはり新人とは思えない完成度を保っています。
まず「チームヒーローもの」、もはやチームヒーローすら陳腐であるこの業界でわざわざその関係性を網羅しながらお話を作っていくのはさぞ楽しかったろうなと
思います。変にひねくれていない、むしろ王道のヒーローものの展開を懐古とブラックジョークを混ぜたこの不可思議な曲調、
カートゥーンアニメばりのテンポのよさ、主流のヒーローものの雰囲気を壊さずに質を高めたことが受賞の遠因となったのかなと思います。
アートに関してですが、ヘルボーイっぽいなと思ったらそのまんまカラリングはヘルボーイの人でした。
キャラもそれぞれがよく立っていて、殺すのも惜しいキャラも色々いました。そいつらを平然と殺して行くのが、作る側の本気を感じました。
特にNo.5やポゴなんかは日本人受けしそうなくらい可愛いキャラでしたし。女性受けもしそうだなと。
日本で唯一刊行され続けているヘルボーイ似のアート、ポップなキャラデザで王道の分かりやすいストーリー、と、アメコミ読者の新規開拓にはうってつけだと思いました。