CEO 最高経営責任者
原題は「あなたは会社(組織)の責任者となった。さて何をするか。」という意味であり、大手ヘッドハンティング会社が行った3年の研究成果を本にしたものである。著名なCEOの信念、先達の教え、反省などを基に、CEOとして最初の100日間に何をなすべきかを見事に纏めている。
米国のエクセレント・カンパニーを率いるCEOに求められるものとして、MBAで学ぶ様な高度な経営手法が思い浮かべるが、本書に書かれていることは、その会社の企業文化の把握の仕方、活かし方であり、上司(取締役会)や部下とのコミュニケーション能力、特に「聞く」能力の重要性である。それらは、ごく当たり前のことの様に思われるが、詰まるところ、組織やそれを支える人間の力を引き出す為の普遍的な方法なのであろうと思われる。
マッキンゼーの元社長が新入社員に送った手紙も付録として付けられているが、「もっとも優れた社員、有能なコンサルタントは、仲間にいちばんよく助けを求める人」というのが印象的である。
『CEO』というタイトルになっているが、部長や課長、或いはプロジェクトチームリーダーなど、初めての部署でマネジャーになる人にも参考になる書であり、何かに迷った時には再読して勇気づけられる書ではないかと思う。
最高経営責任者バフェット~あなたも「世界最高のボス」になれる (ウィザードブックシリーズ)
読めば経営者としてのバフェットの凄さを思い知らされるであろう一冊。バークシャー傘下の企業のトップの経歴やインタビューをまとめたものである。執筆にあたっての力の入れ方や文章の上手さも申し分ない。
経営に干渉しないとか、安く買うとか、事業資質の良い企業を買うとか、そのようなことだけなら他でも色々言われている。本書がとくに際立っているのは、「優秀な経営者が率いる企業を買う」という最も真似しにくい投資行動が、買われた側の言葉として恐ろしく詳しく述べられていることにある。ボスも部下も共に誠実かつ優秀だったら当然のように強力な信頼関係が生まれる。業務のチェックなんてほとんど要らない。事業の資質が良ければ好きなようにやった結果として大きな利益がついてくる。この効果を突き詰めた会社としてのバークシャーの姿が見えてくる。買われることによって被買収企業の経営陣がIRや資本配分に煩わされなくなることの強みもわかる。
本書の多くの経営者からは、「金のためではない」「正直が一番」「顧客の幸せのために」「従業員は家族」「株主への責任を負う」という趣旨の言葉が発せられている。これらの言葉自体はちっとも珍しいものではないが、きちんと達成していることは凄い。大抵の組織なら、正直だったら儲からないとか、客や株主ではなく上司の機嫌重視とか、従業員は切り捨てとか、仕事をするのは偉ぶるためとか、何か大きな問題があるだろうに。