がきデカ 1 (少年チャンピオン・コミックス)
山上たつひこ氏が最も脂の乗っていた時期だったのではなかろうか。
落語をこよなく愛する氏は一見、支離滅裂でありながらもシニカルで一捻りある笑いを提供してくれていたように思う。
これをくだらないとしか思えない人は山上イズムの理解が足りないだけだろう。
過度のボケキャラとツッコミキャラというギャグ漫画の形態として一つのパターンを築き上げたのもこの漫画だと思う。
後のうる星やつらも完全にこのパターンであり高橋留美子自身、がきデカは影響を受けた作品の一つとして称賛している。
錯乱坊はこまわり君をモチーフにした事も有名だ。
大人が失笑するようなエロギャグを、様々な動物達や見た目オッサンにしか見えない小学生達が演じるがきデカワールド。
漢字もロクに読めない小学校低学年当時、これを見て笑っていたかと思うと大人になった今、空恐ろしくなった位である。
しかし、現在復刻されているものは表現規制により割愛されていたり、編集されているので理解が必要。
喜劇新思想大系 完全版 上巻
今までどんなに待ち望んだか
高校時代に全部読みました。うち一冊分だけ所有していましたが、完全版として復活、かつての山上ファンとしては嬉しい限りです。
少し(かなり)お下劣な漫画ですが、現在流通している日本のギャグ漫画を含めてちっとも色あせてこないないこの作品の魅力は語っても語りきれないくらい重要な作品だと思います。
山上作品は「ガキでか」しか接した事の無い方にも是非読んで頂きたい逸品。間違いなくはまります。
がきデカthe best 1
大判でも復活に感謝!
初発表時のカラーページがちゃんとカラー印刷されているのは嬉しかったのですが、そのページは黒のスミ線が薄くて、少し残念でした。(最近の印刷技術で再現できないはずはないと思うのですが…)
また、全話出すとリスクが高いので「THE BEST」という選集なのでしょうけど、お話がつながっていない部分もあって、そのフォローもなく……編集者の怠慢を感じるので、星1つ減点します。
せっかくの金字塔的作品なのに…。
がきデカ 5 (少年チャンピオン・コミックス)
「味覚の秋はやかましいっ!!の巻」の39ページ左上のせりふ、初版では「パンティーのここの部分も・・・」で絵もパンティーなのに、新しい版ではブラウスにすりかわっている。なぜなんだろう。下品すぎるとクレームがきたのであろうか。しかしもっと下品なギャグががきデカには満載されているし、この場面でパンティーをブラウスに替えたからといって下品さが減るとも思えない。真相を著者に聞きたいところだ。
「ゴキブリと共に・・・??の巻」ではももちゃんとこまわりのキスシーンがある。小学生の時ももちゃんファンであった私には衝撃だった!
「足どりかるく!!の巻」では栃の嵐の子どもが初登場している。とてもかわいいので必見。
中春こまわり君 (ビッグコミックススペシャル)
中年になって、しかも、サラリーマンになったこまわり君。
ほぼ「ガキデカ」世代の自分には、あの「こまわり君」が!?という意識を完全に捨てて読むことなどできない。どうしても、当時のキャラと比べながら読んでしまうし、そのギャップを楽しみながら読んでしまう。
ガキデカを読んでいた(読んだ)人と未読の人では、感じ方もおもしろがり方も異なるように思う。
「中春こまわり君」でのこまわり君は、確かに主人公ではあるが、狂言回し的な役割も演じている。そんなこまわり君は(無意味なギャグを放つ)ギャグの人でもあるが、深く思索する人でもある。
どの作品にも、純文学の匂いがうっすらと、ときには濃厚に漂ってくる。
純文学ならぬ純漫画ともいえそうな世界が描かれている。
その傾向は続く「中春こまわり君2(本当はローマ数字だが文字化けするのでアラビア数字の2で表記)」でより一層強くなっていく。
中年の漫画好きには堪らなくおもしろい作品だとは思うが、10代、20代の漫画好き、特に「ガキデカ」を未読の方が、どう感じるか、あるいはどのようにおもしろがるかが非常に興味のあるところだ。