よみがえる自作朗読の世界~北原白秋、与謝野晶子、堀口大學ほか~
北原白秋の読む擬音語がおもしろい。
『神父さん』トントン。
『神父さん』トントン。
『神父さん』トントン。
『神父さん』トントン。
『神父さん』トントン。
『神父さん』トントン。
『神父さん』トントン。
『副院長さん』トントントン。
『副院長さん』トン。
ハムレットの恋人オフィリアの台詞を、まるで歌舞伎の女形の声色(こわいろ)そのままの調子で読む坪内逍遥も、じつに興味深い。
与謝野晶子の朗読が、期待に反して、おそろしく一本調子だったのには驚いた。声の上げ下げの場所が、どの歌も全部おなじなのだ。短歌の詠み方には、古くから独特の慣習があって、その枠から外れるわけにいかないのだろうか。
萩原朔太郎の朗読は、棒読みそのものだった。ところどころ、読み落としている語句さえある。
ふと思った。こんにち私たちが、朗読の典型的イメージとして想起する、NHKのアナウンサーやベテラン俳優の、あの声の調子は、比較的最近になって確立した、一種の様式なのだろうか?
今日ちまたでは、ポエトリー・リーディングとか「詩のボクシング」など、従来の詩の朗読の枠を越えて、ライブ・パフォーマンスとして詩を発表する場が増えている。でも、偉大な作者本人が読んでくれるなら、たとえどんなにたどたどしい読み方でも、つい聞き入ってしまう。やはりテクニックがすべてではない。
長唄全集(二十)新曲浦島/多摩
明治後半に作られた割と新しい長唄三曲のようです。
坪内逍遥の詩の世界が美しい「新曲浦島」。某お家元の御曹司が踊っているのを観て思わず感涙し、調べてみると坪内逍遥作詞ということで余り耳馴染みがないけれども買ってしまいました。「浦の苫屋の秋の夕暮れ」というか、そういう古歌的な美しい想像の海の世界から、船乗りの日常の海へと劇的に変化しながら、歌詞がきっちり曲に乗っているのはさすがです。それに漁師の振りを付けた舞踊家もすごいと思います(曲自体には浦島太郎は出て来ないけれども、舞踊を観ると「浦島太郎かな?」と思える)。
「しずやしず、しずのおだまき」がキャッチフレーズの「賤の苧環」。義経と別れた静御前が頼朝の前で義経恋しの舞を舞うという、語り物のように芝居要素の強い曲です。明治末期の曲というのは知りませんでしたが、歌詞の一貫性や史実の細かい参照などは演劇改良運動なんかの影響かなと思いました。
多摩川は初めて聴きましたが、歌詞に如何にも近代的で堅い部分があり、違和感があります(曲は普通の長唄)。
ザ・シェークスピア―全戯曲(全原文+全訳)全一冊
とにかく全戯曲、全訳がこれ1冊で読めちゃうのはすごい!
しかもお得な値段です
とくに文句はないのですが、強いて言うならば
1.原文の字の小ささをもう少し大きくして欲しい
2.坪内逍遥の訳ではなく(味があって良いのですが、
かなり時代遅れなので)小田島雄志さんの訳にして欲しい
僕は原文と白水Uブックスの小田島さんの訳を対比させながら
読んでます
当世書生気質 (岩波文庫)
一般的な「文学史」評価では、逍遥が「小説神髄」で示した近代小説の理念を、
作者幼少期の「戯作三昧」の影響で果しえていないというのが定説ですが、
当時の書生風俗が垣間見られそれはそれで興味深いです。
とくに美少年好きの自称硬派学生(ど近眼)の温泉での失態は抱腹ものです。
ちなみに逍遥の衣鉢を継いだ長谷川二葉亭の「浮雲」、最初はどこが言文一致の心理写実証小説じゃい!!
と立腹しましたが、巻を進むうち、その細やかな文章に魅了させました。
コロムビア創立100周年記念企画 文化を聴く
文豪たちの自作朗読という、
こんな音源あったんだって感じの超レアなCD。
朗読ってただ読めばいいってものではなく、
演技力、滑舌の良さ、間の使い方といった「技術面」と
その人の個性が出る「声の質」
という2点が重要だと思うのですが、
この観点からこのCDを評価すると
全体の感想としてはかなり良い感じです♪
読み方のうまい朗読もあれば、
余り上手ではないけど味のある朗読もあったりと
楽しめる朗読ばかりです。
また朗読をそのまま楽しむのではなく、
ファンである文豪の声を聞きながら想像をふくらませる
という楽しみ方が出来るのも本品のいいところ!
以下、気に入った朗読者です。
「北原白秋」…一人で6トラックも入ってるだけあって、味のあるいい朗読です。軽く棒読み気味なのですが声の雰囲気が良くずっと聞いていられます。そして途中から入ってくる歌(詩?)を読み方もちゃんと節を付けてて良い感じです。
「与謝野晶子」…何言ってるか分かんないのですが全体の雰囲気はとても心地良い感じです。この声は癖になります!!!!!!
「高浜虚子」「堀口大學」…基本棒読みなのですが、間の使い方が上手いです。
「河井酔茗」「土岐善麿」「釈迢空」「太田水穂」「尾上柴舟」…どこか純邦楽に通ずるような節をつけた読み方は素晴らしいです!
「野口米次郎」… 神社で祝詞あげてるのかってくらいのかしこまった朗読。これはこれで味があります。
「川路柳虹」…下手ではないのですが、ただ音読してるだけといった感じです。
「西條八十」…あまり上手じゃないのですが、人柄が出ている読み方で聴いててほのぼのしてきます(*'ω`*)
「坪内逍遥」…めちゃくちゃうまいです!!!!!!
演技がうまい!!!!!!!
滑舌がいい!!!!!!!!
間の使い方うまい!!!!!
声がいい!!!!!!!!!
ファンになりました(*'Д`)