トスカ*歌劇 [DVD]
小澤征爾やキリ・テ・カナワのファンならずとも、必見の価値はあります。歌唱力、演技ともに素晴らしいカナワにあって、今回特に印象的だったのは、やはり見せ場の一つとして有名な、「歌に生き、恋に生き」を切々と歌い上げるシーンでしょうか。理不尽な仕打ちに対する嘆きを、神に訴えながらも、女の情念や決意を垣間見せるカナワの表情が、歌姫トスカの生き様と重なって見事の一言につきます。スカルピアの殺害前後は、カナワの不安や鼓動まで伝わってきそうな緊迫感にあふれ、芝居だということを忘れてしまいそうでした。舞台衣装や美術は、オーソドックスですが、スカルピアの執務室にある巨大なテーブルを支える人間のオブジェ?は、秘密警察の長官というスカルピアの職業柄を暗示しているようでユニークでした。編集のメリットもありますが、ただカーテンコールは、最後まで収録されていないのが残念でした。
プッチーニ (作曲家・人と作品シリーズ)
著者はバリトン歌手でミラノのスカラ座などイタリアの歌劇場で活躍していた人だけあって、音楽評論家とは少々視点が異なっています。本書はプッチーニのオペラが誕生するまでのいきさつ、特に台本家とのすったもんだが書かれていて面白く読むことができました。私はオペラはあまりよく知らず管弦楽曲ばかり聞いていて、有名なオペラのアリアを知っている程度ですが、本書終わりの「作品篇」に書かれたオペラのあらすじや解説を読むとオペラ全体を観たいなという気になりました。
ぐっすり眠れるクラシック
3曲ほど聴いただけで眠りの世界に導かれてしまうこのCDは、実に心地良い。 曲の多くは実にメロディアスですーっと耳の中に入ってくる。有名な曲も沢山入っているので、耳を傾けていると知らず知らずに夢の中へ…なんて事もあるかも知れない。眠る目的以外にも、ストレスの溜まっている時や癒されたい時などに聴いても良いだろう。 疲れている現代人にはこのCDを聴いて、たっぷり睡眠をとって貰いたい。
プッチーニ:ラ・ボエーム全曲
ベルリン・フィルは「うまい」の一語に尽きる。それに伍してすばらしいのは歌い手たちである。ロドルフォを歌う、まだ若きパバロッティの声の艶と響きとそのコントロールの妙は、この声楽家の天才を語ってあまりある。かくも高い音がいともたやすく歌われるとき、一種言い難い快感を覚えずにはいられない。ミミ役のフレーニがまたいい。声の質がミミに合っているのだろう。伸びやかな声による、かわいくも哀切に満ちた表現はミミをみごとに演じきっている。バリトンのパネライの巧さはいうにおよばず、フレーニの夫君であるギャウロフの朗々としたバスの響きも聴きものである。どれひとつとっても万全の演奏記録。後にも先にもこれ以上の「ラ・ボエーム」はない。
録音は1972年と古くなってしまったが、録音で名を馳せた英デッカの録音はいまもすばらしい。高音部でわずかに荒れる部分もあるが、鮮度は保たれており、まず不足は感じられないだろう。
プッチーニ:歌劇《トゥーランドット》 [DVD]
このDVDの公演は、原作の舞台である中国紫禁城を野外劇場に改修しておこなわれた、大規模な試みの記録です。一昔前だったら、紫禁城をこのように使ってしまうなどということは想像もできなかったことに違いありません。正直を言って、演奏そのものは、他のDVDやCDのものに比べて特に素晴らしいというほどのものではありませんが、何と言っても豪華で大規模な舞台に加えて、映像版ならではの特殊効果や雰囲気満点の挿入映像の数々は、おおいに楽しめます。さらにこのディスクには、メイキング映像や、いくつもの言語によるあらすじ解説が収録されていたり、ところどころの場面でオペラのDVDとしてはまだ非常に珍しいマルチアングル機能が使われていたりなど、DVDの機能をフルに生かした意欲的な作りになっている点は、非常に高く評価できると思います。このディスクを楽しむ方々は、もちろんこれらの機能や映像美を充分に堪能していただきたいのですが、それに加えて、原作に即した大舞台を得てますますその美しさの本領を発揮しているプッチーニ晩年のこの作品自体の魅力も充分に味わうことを忘れないでほしいと思います。