3-4-3 ~究極の攻撃サッカーを目指して~
3-4-3が攻撃的。「4−2−3−1」の著者の言葉とは思えない。あの本には,確か山本昌邦の採用する「3−4−3」の陣形は守備的だと書かれていたからだ。しかし,読んでみてその疑問は解けた。山本ジャパンの3−4−3とは違う。ザックの3−4−3は5バックになりやすいという欠点はあるが,確かに攻撃的なのだ。また,3−4−3にはかつてのオランダ代表やバルセロナが採用した中盤がダイヤモンド型の3−4−3もある。こちらは文句なしに攻撃的である。どのポジションの選手にも2か所以上のパスの出しどころがあるのが特徴である。
あの日韓大会でベスト4に行った韓国代表も3−4−3で戦っていた。弱者に適したシステムらしい。このシステムで試合をする選手には,複数のポジションをこなせるユーティリティー性が求められる。このポジションしかやらない,というスター選手には向かない。だからこそ,(当時)スーパースターがいなかった韓国代表に合っていたのだろうし,日本にも合っていると言えそうだ。
ザッケローニの3−4−3についてももちろん言及されている。このシステムは,3トップの両サイドがウイング的な役割をして初めて真価を発揮する。3トップが真ん中に寄ってしまうと,3−4−1−2に近い形になり,守備的になってしまうのだ。また,前述したように,相手に押し込まれたときに5バックになってしまう危険もある。著者は,ザックがイタリアで結果を残し続けられなかったのは,3−4−3を使い続けられなかったからではないかと推測している。確かに,バルサのサッカーなどを見ていると,「攻撃こそ最大の防御」と思わされる。攻撃的なサッカーのほうが勝ちやすいかどうかは分からないが,少なくともそういうサッカーは見ていてもやっていても楽しい。日本でもそういう(3−4−3の)サッカーを見たいと思うのは私だけではないはずである。