狂人失格 (本人本)
中村うさぎさんは前から名前を知っていましたが、ゲテモノ的な印象があって、敬遠してしまっていました。今回これを読んで、ものすごく自己分析をする人なのだなあとわかり、その痛々しいまでの自己分析に惹かれるものがあって、ほかの作品も是非読みたいと思いました。
ただ、この作品に関しては、複雑な気持ちです。そもそもこの本を読もうと思ったのは、本書で「優花ひらり」と名づけられた人物をネット上で前から知っていて、そこからの興味です。中村うさぎさんと同じように、この脳天気さはなんだろうと思い、そんな彼女に必死で攻撃なコメントを書き続ける人たちに、どうしちゃったの?という気持ちで見ていました。だから、そのあたりでは、中村うさぎさんにとても共感しながら読んでいたのですが……。
私のような平凡な暮らしをしている者でも、「やばい」系の人物というものには何度か接したことがあり、お互いのために、期待させるのも悪いし、害が及んだときに対処しきれないだろうし、と予想も立って、近づくのを避けるようになっています。ところが中村うさぎさんはそういう予想がまったく立たないようで、むしろ自分の言いなりになるはずだと思い込んで近づいていきます。うーん、年齢や経験と反比例するこの世間知らずさはなに? よっぽどのお嬢様育ちなの? とぼけてるだけで本当はわかってた? いろいろと考えながら読んでしまいました。つまり、私的には「優花ひらり」には興味がわかず、すっとぼけた(失礼)中村うさぎさんのほうに興味が行ってしまったんですね。そして最後に出た結論は、どういう事情であれ、他人のことをここまで書いてはいけないという自分なりの常識でした。だって、読んでる私からすれば、「優花ひらり」はまあ、どこかにいるってタイプの人で、ぐいぐい近づいていく中村うさぎさんのほうがどうかしているんだもの。ずっと小説を書いてると、ここまで世間からずれるものなのかなと、そんな感想を抱いた一冊でした。
ちなみに、このモデルの方がネット上で有名になったのは、中村うさぎさんがこの本の中で、予想もしなかったような被害を受けた、というふうに書いておられる内容とほぼ同じことを前にも行い、当時、彼女が頻繁に出没していたY掲示板で被害者の方たちが彼女を非難して、騒ぎとなったからです。うさぎさん、それも知らなかったのかしら。