ライヴ・イン・ジャパン(完全版)
フリージャズの金字塔。 音楽を熱心に聴く人であれば絶対聞くべき。 でも、初めてジャズやコルトレーンを聞く人には絶対すすめられない。 様々な音楽に精通しないと、この内容を本当に理解することは難しいだろう。
ステラー・リージョンズ
後期コルトレーンのアルバムは「オム」に代表される阿鼻叫喚の、金きり声のようなサックスが叫ぶ、長時間吹き荒れる嵐のような作品ばかりではない。
本作はカルテットで、1曲1曲も短くシャープで、嵐の時期をつきぬけた4人が腰を落ち着けて、黄金のカルテット時代に近いジャズを聴かせる。
カルテットといっても、マッコイ・タイナーとエルヴィン・ジョーンズにかわって、アリスとラシッド・アリが彼らの実力と個性を十二分にしている。この時期の高速の曲の演奏は彼らぬきでは考えられない。
嵐の吹き返しのような曲もあるが、M1、3、7等のように、コルトレーンがスピードを落として、ずっしりしたサックスの響きを聴かせてくれる曲が比較的多く、アルバム全体に新鮮さがある。
録音時期はインターステラー・スペースとほとんど変わらない。コルトレーンが残り少ない持ち時間の中で多彩なアイデアを表現して豊富な音源を残してくれたことは幸いだ。
黄金のカルテット解体以降の後期コルトレーンの音楽はどうも、という人には、本作はその音宇宙に近づくための良き入口になるだろう。
啓示 (紙ジャケット仕様)
santanaがalice coltraneとコラボレートした有名な1枚。これは現在の眼で見てもモニュメンタルな録音だったと云えるだろう。
aliceとの共演はsantanaの希望だった由で(その経緯については岩浪洋三さん(!)の手によるライナー・ノートに詳細が書かれている)…当時ロック・スターだったsantanaが、実質はどういう処を見ていたのかがよく判る。何しろその相手が由りによってalice coltraneというのは凄い。バックのメンバーもdave holland、tom coster、jack dejonette達…と完全にジャズ人脈である。
ロック・サイドからの興味のみで聴けば、これは正直かなりキツい作品だろうが、当時のalice coltraneのソロ作を何か1枚でも御存知の方はすんなりと入れるだろう。終始厳かで、かつ穏やかな音空間に満ちている。彼女の当時のソロ作(impulse盤)の中には相当に激烈な演奏も多いのだが、ここでは祈りの様に穏やかな印象を与える楽曲ばかりだ。
aliceはアグレッシヴな後半の1曲でのウーリッツァー・オルガン演奏を除いてハープに専念。夜の大海の、絶え間ないうねりの様な弦楽のアレンジメント…。そして彼女の生み出すうねりの中を泳ぎまわる魚のようなsantanaのギター。
…もしかしたらsantanaはaliceのうねりの中に身を投じるようにして、自己の音(ギター)で祈祷していたのかもしれない。中袋に載っているセピア調で写された一葉の写真。眼を閉じて祈るsantanaを聖母のように優しい眼差しでじっと見つめるalice…。この写真に充満する何ともいえない雰囲気が、まさにこのアルバムの音世界を体現している。こういうコラボレートは有りそうで滅多に無いものだと思う。santanaとalice…。改めて考えても、やはり凄い作品だ。