中村よお
中村よおさんは神戸在住のミュージシャン・文筆家です。
ラジオのパーソナリティもされていて、関西地方で日曜日深夜、
というより月曜日の未明に番組を持っておられます。
このアルバムですが、まさしく、神戸・阪神間の雰囲気がよく出ています。
カレッジフォークほどカッコつけない、
でも四畳半フォークほど生活臭にまみれていない、
ほどよくお洒落、でも言いたいところはきちんと言う、
都会の、というより神戸や阪神間の洗練された感覚、
そして、ニヒルだが、ともすると虚無感の底に
落ち込んでしまいそうになる「何か」をだきしめて、
抱え上げ、いとおしむかのような楽曲…
とても親近感が感じられました。
製作は1988年ですが、曲の中には
1995.1.17(阪神淡路大震災)や
2011.3.11(東日本大震災)を想起させる歌詞もあります。
「僕の中で燃え残った街が燻って(くすぶって)いる
さようなら昨日までのロマンチスト(『場面』)」
「焼け落ちた家があった
傷ついた心があった
崩れ去る夢の中でも
美しく 美しく 美しくなれたら(『崩れ去る夢の中でも』)」
そして、最後に収録されている『夜を束ねて』の
このレビューのタイトルにした、「嘘になってしまうような…」の
歌詞に何かホッとさせられる自分がいたりします。
個人的にはこの曲が一番好きです。
「あの長い時間を忘れてしまった訳じゃない
でもそれにこだわり過ぎていたら
何も見えなくなってしまう(『夜を束ねて』)」
村上知彦さんの書かれているライナーノーツもいいです。
「神戸というのはこんな雰囲気の街だ」という一文に
思わず「そぅそぅ」と相槌を打ってしまう私です。
そして、それは阪神淡路大震災から復興してきた今も変わりません。
私は、日ごろクラシック音楽を聴いているのですが、
非常に気に入ったので、まことに門外漢ながら、レビューしてみました。
中村よおさんの新しいアルバムが待たれるところです。