何度となくお風呂でこの本を読みました。この本を読むときは、何となく気持ちが沈んでいる時が多いのですが、そういったとき、アオイの気持ちが私の中に入り込んできます。
「冷静と情熱のあいだ」というタイトルそのままに、静かな中に、アオイの情熱が見え隠れしています。忘れようとしても、忘れられない人。今はどこで何をしているのかもわからない人を思い続けることが不幸であることはわかっている。だからこそ、その人への思いを封印するために、思考をとめて、必死で思い出さないようにしている。言葉も匂いも・・・どんな小さなことも、連想させる全てを拒み続けることの苦しさ。
心の奥底で燃える思いを隠して静かな生活を守ろうと必死になっている、そんな不器用でプライドの高いアオイが、約束の日に自分を騙すことをやめて、思いを解き放って・・・それでもやっぱり怖くて、変わりきれなくて・・・
確かにアオイは周りの人間からすれば厄介な人間だと思う。だけど、純正という1人の大きな存在があることで、誰とどこにいても、夢中になれないアオイの想いがよく現れている。アオイほどではないにせよ、そんな思いを味わったことのある人ならば、きっと心を静かに締め付ける素敵な作品だと思います。