教育再生への挑戦―市民の共汗で進める京都市の軌跡
かつては底辺校といわれた学校が新学校へと変わった「堀川の奇跡」など、
学校教育において大きな成果を挙げている京都市の実践をつづった一冊。
学校・教師が日々メディアの批判にさらされる中、
こうした成果を挙げられていることは注目に値する。
文章全体を通して、
京都市の先生方の熱意と行動力はひしひしと伝わってきた。
先生方の熱意・行動力に裏付けられた経験の積み重ねが
京都市の実践を先駆的なものにしたことが良くわかった。
しかし一方、
探求科の設立や小中連携、市民の教育参画など
実践の紹介そのものも充実しているが、
実践が成果として実を結ぶまでの過程が今ひとつ見えにくい。
まるで、熱意や行動力さえあれば何もかもうまくいくかのようだ。
教育をよりよいものにするため、どうしてこれらの実践が必要なのか、
実践に取り組む際、学校全体で特に何を目指したのか、
そうしたより細かな分析が、この書には驚くほど少ないのである。
こうした著書は、現場で悩みながらも努力を続ける教師たちの励みにはなるだろう。
しかし、この書から何かを学び、
自分たちの教育活動に取り入れることは難しいのではないか。
京都市の成果を学校教育全体に広めるためにも、
これらの実践をより詳細に分析した書が出ることを願う。