スタインベック全集 (18)
1910年のメキシコ革命の指導者の一人であり、メキシコの国民的英雄であるエミリアーノ・サパタの戦いを描いた作品だが、メキシコの貧農と地主の横暴の問題が『怒りの葡萄』のそれと似ていたため、このテーマがスタインベックの注意を惹いたのであった。また、1936年前後に流行していたテーマでもあったという。スタインベックは詳細な調査を行い、サパタの知人にも直接取材して、サパタの結婚証明書を発見するなど大きな成果を上げた。ここにはエリア・カザン監督の映画「革命児サパタ」の脚本と、それに先立つ脚本風ドラマの二作が収められている。映画の背景となった事柄及び作者の意図やアイデアを詳細に記しているので、これを読んでから映画を観る、あるいはその逆にすると理解が深まる。特に呪術師については「忘れられた村」(全集7)も大いに参考になる。ここで知り合ったカザンが後日映画「エデンの東」の監督を行うことになる。「ノーベル賞演説」とは関係ないのだが、スタインベックのノーベル賞受賞について「優れていたのは昔の作品だった」と批評家達から反発があったという。(「年表」(全集20))日本人全員に対して与えられたかのようにこぞって褒めたたたえる日本では、全く考えられない反応である。