春色の花嫁 (ハーレクイン・ヒストリカル・ロマンス)
春色の花嫁、3部作品のひとつ―悪魔に魅せられて
短編の割には心理描写をしっかり描いていました。
ヒロインは命を懸けてヒーローから逃れるのですが、ヒロインを捕まえることばかり考えていたヒーロー、ヒロインが何故逃げるのか思い始めてからヒーローの行動が変わります。
そして初めて相手の立場になって考えることになります。
そこまでの変化を脇役たちを通して上手く表現しています。
又ヒロインもヒーローと同じで逃げることばかりですが、徐々に自分の気持ちに素直になっていく様子が良かったです。
短編でありながら二人の心理描写を深く掘り下げているので読み応えのある作品だと覆います。
駈け落ちは死体とともに (集英社文庫)
若い人に向けて書かれたと思われる作品集です。優秀な息子と女の交換日記が発見され、父親が相手の女を探す「交換日記」は学歴重視で歪んだ少年の姿が印象的です。老人が何かいいことをしようと思いつく「善の研究」はラストが二転三転して驚かされ、「霊魂との約束」は心中して生き残ってしまった女が過去の男の幻影に怯える話で、どちらも少し怖い作品です。「二つの顔」は王子と乞食をしているスターとサラリーマンの話です。憧れの上司から、今から自殺するという電話がかかってくる「命のダイヤル」、暇な大学生が恋する盲目の少女と出会う映画のような短編「遠い日の草原」、いつも華やかな従姉の影にいる屈折した少女が描かれた「壁際の花」と、コミカルな文章でユーモア溢れる表題作の八編が収録さ!れています。解説に大人のための高尚な童話とあります。笑いや怖さだけでなく語りかけるものを持った作品集だと思います。