CINEMA 16:EUROPEAN SHORT FILMS [DVD]
ブニュエルとダリの「アンダルシアの犬」、ゴダールの「男の子の名前はみんなパトリックっていうの」、シュヴァンクマイエルの「ジャバウォッキー」、ラース・フォン・トリアーの映画学校卒業時作品「NOCTURNE」、「リトル・ダンサー」のスティーヴン・ダルドリーの監督デビュー作「Eight」など、ヨーロッパのショート・フィルム16編を収録したオムニバスDVD。作品は面白い物が多く、大満足の1枚なのですが、監督や評論家などによる音声コメンタリーに、日本語字幕がついていないのが残念だったので、星ひとつだけ差し引きました。収録内容は以下です。
1. Juan Solanas (France) "L'Homme Sans Tete" ("The Man Without A Head")
2. Tom & Charles Guard(UK)"Inside Out"
3. Jean-Luc Godard (France)"Charlotte et Veronique, ou Tous les garcons S'appellent Patrick"
4. Peter Mullan (Scotland)"Fridge"
5. Christopher Nolan(UK)"Doodlebug"
6. Jan Svankmajer(UK)"Jabberwocky"
7. Chris Morris (UK)"My Wrongs #8245-8249 & 117"
8. Anders Thomas Jensen (Denmark)"Valgaften (Election Night)"
9. Lars Von Trier (Denmark)"Nocturne"
10. Lynne Ramsay(UK)"Gasman"
11. Stephen Daldry(UK)"Eight"
12. Asif Kapadia(UK)"The Sheep Thief"
13. Toby Macdonald(UK)"Je T’aime John Wayne"
14. Peter Naylor, Carl Hunter(UK)"Unloveable"
15. Mathieu Kassovitz(FR)"Fierrot Le Pou"
16. Luis Bunuel and Salvador Dali(FRA)"Un Chien Andalou"
"L’Homme Sans Tete" は、作品も監督も、はじめて知ったのですが、これがすごくいい作品で、収録作品の中でも特に気に入りました。頭の無い男が、好意を寄せる女性とのデートの為に、頭を買いに行き・・・という、ファンタジックなお話で、映像は、美しく印象的で、目を奪われるもので、ストーリーも良く出来ており、監督の非凡な才気を感じます。2003年のカンヌ映画祭のジュエリー賞やフランスのセザール賞など、数多くの賞を取った作品だそうです。
狂気をユーモラスに描いている、Chris Morris の"My Wrongs #8245-8249 & 117" も、気に入った一本。英国アカデミー賞受賞作品だそうです。
アンダルシアの犬【淀川長治解説映像付き】 [DVD]
ダリはスペイン市民戦争あたりを境に保守したがシュールリアリズム時代、とくにブニュエルと組んで前代未聞、空前絶後(表現が陳腐でごめん)の衝撃的映像を放った。「アンダルシアの犬」はわずか15分の短編。しかしその映像空間は「悪夢」というか「シュールリアリズム・ピロー」(ジェファーソンのCD)というかいいようがない。問題の女性の眼球をかみそりで切り裂くシーンは豚の眼を切ったもの。「糧なき大地」など見ると映画は戦前で大体終わったことを痛感する。だから「もうパロディしかない」ゴダール。
アンダルシアの犬 [VHS]
『黄金時代』(1930)で有名なスペインのルイス=ブニュエル監督の作品。シュールレアリズムの代表的映画で、何よりも「映画が暴力であること」を証明した作品。正直いって夢にまで見るので、気の弱い人はお勧めできない作品だ。
銀河 [DVD]
この作品はキリスト教の宗教感に対して疑問と嘲笑を交えたロードムービー。キリスト教の宗教感と歴史に疎い日本人にとっては理解しにくいテーマなのだけれど、何故か飽きずに最後までいっきに観ることができる。
話はジャンとピエール(ヨハネとペテロにあやかった名前となっている)の二人がフランスからスペインのサンティアゴ・デ・コンポステラへの巡礼の旅。この地への旅の作品としてはコリーヌ・セロー監督の「サン・ジャックへの道」があるが、本作は「サン・ジャックへの道」のようなハートウォーミングストーリーではなく、ジャンとピエールの珍道中に歴史上の人物や死の天使、キリストや聖母マリアまで時代の違いなど関係なく登場させ、ルイス・ブニュエル監督の宗教に対する疑問・矛盾をつきつける。
特に小学校の寸劇で異端の宗教に対し「呪いを」と言わせる大人たちや宗教裁判で火あぶりの刑を言い渡す司祭に対し、「異端教徒は自分たちを火あぶりなどしません」と言わせてみたり、キリスト教の醜い歴史や教理への狂信者への嘲りをユーモアたっぷりに観ることができる。だから、日本人にとって分かりにくい欧米の宗教感を皮肉たっぷりに描いた本作も楽しんで観ることができるのだ。さすがブニュエル。
登場人物や時代をグチャグチャに入り交ぜても何故かそこに一体感があるような錯覚に陥らせ(この辺は「欲望のあいまいな対象」の二人一役に似た感覚)、徹底的にキリスト教の狂信と歴史に対し疑問を突き付ける大胆な作風に脱帽。