高慢と偏見〔新装版〕 (河出文庫)
陽気で才気活発なリジーとプライドが高く辛らつで妥協を知らないダーシー、女性のたおやかな魅力と男性の誠実さ、どちらが相手をひきつけるか?主人公の二人のぶつかり合いが結膜へ向けて期待を盛り上げてくれます。
時代を感じさせない、生き生きと描かれた周囲の登場人物も魅力的です。オースティンの人間理解の深さが随所に「皮肉とユーモア」として味付けされています。また、誠意やおおらかさ、軽薄と利己心、登場人物の性格が人生にもたらす帰結もキチンと描かれています。
DVDも原作に忠実でとても良いできでした。ダーシーを演じるコリン・ファースのかっこよくもいじらしいこと!女性ファンは大満足でしょう。(^-^)
ちなみに個人的になお気に入りはコリンズ氏&ベネット氏です。
世界史概観 下 (岩波新書 青版 600)
(以下3行上巻レビューと同様)
この『世界史概観』は1922年初版。日本では1939年(昭和14年)に『世界文化史概観』 として上梓される。
以後,子息および、歴史家レイモンド・ポストゲートによって2度改定される。本書は、1965年(昭和40年版)で、
改題され現タイトル『世界史概観』となったものである。
下巻は、王侯に反逆とローマ法皇の分立から始まって、第二次世界大戦改訂版出版直後の1946年までである。
興味深いのは、1965年(昭和40年版)の4ないし5章分が、書き直されておりそれが1946年(昭和21年版)
とともに記されているところである。
たとえば、
1946年(昭和21年版)
「(これからの時代は)人間の社会機構の拡張および複雑さと歩調を合わせるほどには、はげしい想像力に富む思索力が、
増大していないこともあるかもしれない。それが人類のもろもろの希望に投げかける最も暗い影なのである」
〜つまり、人類は馬鹿かもしれないということだ。
1965年(昭和40年版)
「世界が二つの敵対的陣営に分裂したことを標示するためにここで選んだ年、1948年、はかなり任意的なものである、
たしかにスターリンとその配下とは、それよりずっとまえにこの分裂を予期し想定していたし、そののちにも、
協調が回復されるだろうというはかな希望のひらめきが何度かあったこともたしかである。しかし今日われわれが
持っているあらゆる証拠は、ソ連、すなわちスターリンとその下働きたちが、今や消極的妨害から積極的攻撃に
転ずることができると判断したのはこの年であったということを証明しているように思われる」
〜つまり、人類は馬鹿だったのである。
今は2020年だがH・G・ウエルズは,どんな最終章を書くだろうか。人類は馬鹿のままだろうか。
女の園 [VHS]
木下恵介監督の社会派的側面が出た作品だが原作が超さえない小説の
ためか,映画も暗さばかりが目立って,さりとて社会的なアピールに
もいまいち欠ける.女優陣が豪華だし阪妻二世のデビュー作だが,
しっくりこないですね.
世界史概観(上) (岩波新書)
第一次世界大戦とその戦後処理に於ける列強各国の愚劣さに業を煮やしたウェルズは、「人類共通の観念体系なくして世界平和は不可能」との見地に立ち、史学、生物学、経済学を三本柱に、人間の営みの全体をひとつに総括する意図の下に一連の啓蒙的著作の執筆に取り掛かった。それらはそれぞれ"The Outline of History"(1920)(邦訳複数有)、"The Science of Life"(1930-31)(『生命の科学』、平凡社、1942-43)、"The Work, Wealth and Happiness of Mankind"(1931)(『現代世界文明の展望』、鹿島研究出版会、1967)の三書となって結実した。
本書"A Short History of the World"は、"Outline of History"への大反響に「大衆は知識を欲している」との確信を得たウェルズが、より読み易い様にこれを簡略化して1922年に世に問うたもので、当時全世界で三百万部と云う異様な売れ行きを示した。日本でも戦前から何度も邦訳が為されており、この岩波新書版の改訂前(『世界文化史概観』)の初版は1939(昭和14)年まで遡るが、当時のウェルズは既に世界国家の構想を唱えたり、「日本の天皇制はここ数年の裡に崩壊する」等を含む数々の「予言」を行って危険視されていたこともあり、彼の思想的な側面についての全容は殊に昭和時代に入ってからは我が国には余り知られて来なかった。
阿部知二によるこの1966年の改訳版は1946年の死の直前のウェルズ自身による第2版を基本に、彼の息子のG.P.ウェルズと歴史家のR.ポストゲートが手を加えた1965年の第3版を補遺の形で収録したものである。