もずく、ウォーキング! 『オレはルッコラ』
12月生まれの少年(2) (バンブー・コミックス)
2008年に発売された1巻から待ちに待ち続けてようやく発売
された第二巻。
作者の別作品「サナギさん」に近く、日常をほんの少し違った
角度で見てみると、まるで違った世界が見えてくる・・・
といった「気づき」が心地良い。
作者はかなり前からこのようなスタンスで漫画を書いているが、
よくここまで「違う視点」をもち続けられるものだと感心する。
え!?絵が下手なのに漫画家に? (ヤングチャンピオンコミックス)
最近よくある、カラスヤサトシや福満しげゆきと同じような、
自虐テイストを含んだ自伝風エッセイコミック。
こーいうタイプの漫画はたいてい
・女にもてない
・鬱屈している
・漫画に打ち込むが絵が下手でうまくいかない
というパターンがあるが、それぞれ面白く読ませている。
そう読めるように工夫を凝らしているのか、情念が濃すぎるところが
面白くて読ませるのかわからんが。
施川ユウキは自身も作中で言ってるように非常に淡々としているので
ドラマチックな展開は何も無いが、それがかえって氏の言葉の力を
引き出していると思う。
ほんと、この人ってエッセイストとか絵本作家向きだなあ。
森のテグー 1 (ヤングチャンピオンコミックス)
「森のテグー」は施川ユウキにとって新しいタイプの漫画だと思う。
顕著なのは舞台設定だ。「がんばれ酢めし疑獄!!」は無秩序にキャラが存在しベースとなるものはなかった。「サナギさん」は学校、「もずくウォーキング」は家族という集団が土台にあった。
この「森のテグー」での舞台は森の中の村。どこか閉鎖的ながら、今までより一回り広い社会である。その中には学校も家庭もあり、各キャラの関係性も友達、家族、村民、仕事仲間と様々だ。
さらに主人公のテグーはネコ。他にも動物たち、謎の生物も村民として生活しており、キャラモノの要素もある。
と、まるで過去の総括的な作品にも思えてくる。
村の生活を覗いて見ると、木の家に住み、青空の下で学んでいるという自然に溢れた暮らしをしている。そこはイメージ通り。
だが視点を変えれば。図書館や天文台などの研究的施設。また貨幣制度があり、町から行商が来るという文化の発達。村の名物である風車も、電力を売ることで村の財政を支えているという機能を果たしている。動物たちもやり取りだけなら人間と相違ない。
というように、非常に現実的な部分が浮き彫りになってくる。架空の社会を描くために、今まで描かなくても良かった設定が掘り下げられているせいだ。
何より奇妙なのが、村には人間もいることだ。森の外には当然、人間の村もあるはず。少なくとも電気を利用している文明が。となると、この未発達な森の存在は一体?
要するに、「森のテグー」は世界観から興味深い作品になっているのだ。
果たして、これは現代を舞台にしたファンタジーなのか。あるいは未来の物語なんだろうか。そして、この世界を通じて施川ユウキは何を描こうとしているのか。ゲラゲラ笑いながら、そんなことまで考えてしまう。これはファンシーな皮を被った問題作だと思う。
ついでに余談。
テグー父の名前はアンヒューマ。人間のハラダさんが彼を「アンヒューマさん」と呼ぶのがやけに引っかかるのだが。
もずく、ウォーキング! 『オレはルッコラ』
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