娼婦との揺らぐ人間関係を描いた「驟雨」をおもしろく読んだ。
身につまされる思いがする。娼婦だったときには心を探ることなく、他愛のない会話を繰り返すのだけれども、相手への思いが次第に募り、一人の娼婦が「固有名詞」を持つにいたる。増していく探りを入れるような会話、相手を思う心。それにつれて、生じてくる嫉妬心とそれに抗う自我。
主人公の繊細な心の動き、映像が目の前に浮かんでくるような風景描写に心を打たれる。