切腹 [DVD]
江戸屋敷の庭先という最小限の空間で織り成す復讐劇。じわじわと暴かれる武家社会の虚実。仲代演じる主役の立場で感情移入するものなら、透かさず理詰めでやり返してくる江戸家老の三國のふてぶてしい演技。最後までどちらが正しいのかがわからないままラストへと突き進む、最初から最後までまったく隙の無い緊張感の持続。この醍醐味こそ、かつてあった時代劇の到達した日本映画の底知れぬパワーの一つだと感じるものです。決してバッサバッサと切り倒せないリアリティ。いずれ屋敷内で切り倒されるにせよ、到底かなわぬ鉄砲で撃たれ、鎧にしがみ付く最後が、仲代の成就を象徴するのなら、何事も無かったように取り繕う三國の手際良さは、今後何百年も続く変わらぬ武家社会の象徴でもあり、その対比がすばらしい。
一命 (講談社文庫)
滝口康彦と言う作家を今まで全く知りませんでしたが、この短編集を読むと、どれも心に沁みる作品ばかりで驚きました。
この中には、「異聞浪人記」「貞女の櫛」「謀殺」「上位討ち心得」「高柳父子」「拝領妻始末」の六編が収められています。
どれも秀作なのですが、「異聞浪人記」「拝領妻始末」は、共に映画化されているだけあって読み応え十分です。
その他の作品も、ミステリアスな作品もあり、楽しく読むことが出来ます。
この六編は、いずれも「時代小説」なのですが、どのテーマも現代社会に通じる作品ばかりで、一層心に残ります。
こんな素晴らしい作品を書いた作家を全く知らなかったこともあって、記憶に残る一冊になりました。
切腹 [DVD]
私はこの映画を数年前アメリカで観たが、まったく圧倒されてしまった。時代状況を反映した唯物論的「切腹」の解釈であり、仲代達也、三国連太郎をはじめとする、往年の名優が繰り広げる演技も、今となっては少々舞台がかって見えはするものの、その迫真性は比類がない。今日これに匹敵する映画を製作するのは困難ではないだろうか。戦後日本映画の最高傑作と呼ぶにやぶさかではない。
切腹 [DVD]
私はこの映画を数年前アメリカで観たが、まったく圧倒されてしまった。時代状況を反映した唯物論的「切腹」の解釈であり、仲代達也、三国連太郎をはじめとする、往年の名優が繰り広げる演技も、今となっては少々舞台がかって見えはするものの、その迫真性は比類がない。今日これに匹敵する映画を製作するのは困難ではないだろうか。戦後日本映画の最高傑作と呼ぶにやぶさかではない。