ゴビ砂漠の恐竜たち
1990年代に行われたアメリカ自然史博物館・モンゴル共同調査隊の記録ですが、本当に命がけの調査ですね………恐竜の卵の化石が発見されたフレーミング・クリフまでの道程が実に難しいことこの上ないこと、砂嵐が来たら苦しいこと、1920年代のアンドリュース隊の調査の時には盗賊の襲撃をギリギリまで避けたこと等々………こういう苦労があったからこそ、従来の定説を覆し、博物館の壮大なコレクションに加わっていくのですね。
例えばオヴィラプトル類の胚や抱卵状態の化石、多くの哺乳類等重要な発見が相次いだことで、いまや恐竜学においての『常識』にまで成長したのですから………幼いころに抱いていた夢に本当に、『現実』として飛び込むには大変勇気があることなのです。
モンゴル大恐竜―ゴビ砂漠の大型恐竜と鳥類の進化
全体には白亜紀のモンゴルから発掘された、特に獣脚類に焦点を当てた力作といえる。著者の一人の小林快次氏がオルニトミモサウルス類(所謂「ダチョウ型恐竜類」)研究の泰斗とあってか、その項目では重要な研究成果が分かりやすく書かれている。また系統関係図が随所に示されているのも嬉しい。ただ、欲を言えば注目の高い他の獣脚類、たとえばテリジノサウルス類やモノニクス類など鳥類との関連が深い恐竜についての記述が多ければ、なお良かったと思います。