マイルス~ザ・ニュー・マイルス・デイヴィス・クインテット(紙ジャケット仕様)
マイルスの55年録音作品。ここに第一期クインテットが集結した。若々しいのに成熟している。このしっくり感は何なんだろう。
精子と卵が結合するような感じ。
まず、ゆったりと始まる。そのままバラードへ。マイルスのミュート奏法が美声。また包み込まれる雰囲気を演出する。とても
美しい。でもただ美しいだけではない。美しく力強いのだ。それはガーランドとフィリー・ジョーの影響。この二人はもともと
空間感覚の演出がズバ抜けて巧いが、ここでは更に際立つ。雰囲気を壊すことなく混ざってとけこむ。それでいてダイナミズムに
主張してくるあたりは最早言葉じゃ表現できない魅力ではないか。霊感が爆発してんのよ。それでマイルスも影響受けて霊感の
閃きを感じさせてくる。冴えてる。
そのままアップテンポの三曲目へ。沸騰してるねグルーヴが。素晴らしいリズム陣に敬意を示すかの如く、マイルスが煽る。
一触即発のインパクトにかけたようなマイルスのパッションが凄まじい。
そして表舞台に出てきたトレーン。当初の案ではロリンズを起用しようとしたらしいが、トレーンで正解だろう。ロリンズじゃ
いい意味で悦楽的すぎる。聴き手を砲撃するような強烈なショックを与えるのがトレーン。それがプラスの方向に働いており
演る方も、聴く方も緊張感が持続する。また忘れちゃならないポール・チェンバースの存在。ベースが勇躍してる。それでいて
彼はいつでも舵取り役を忘れない。
このクインテットは相性があまりに良すぎる。それだけに刹那的すぎた。でもマイルスは止まらない。トレーンも同じく。
パイレーツ・オブ・カリビアン 自由の代償(上) (竹書房文庫)
ゼルズラの宝をめぐっての物語だが、上巻は人物説明と回想が多く、
物語に相当な膨らみが出ている。
ジャックの目の周りの黒い化粧の由来など、
これまで明かされていなかった事がいろいろ明らかになり、
本編以上におもしろい(少なくとも生命の泉よりは間違いなく)。
ジャックの恋愛観、ティーグとの確執、ベケット含めて各人物の
過去などもあきらかになる。
反面、メインストーリーがなかなか進まない為、少しイライラする可能性がある。
それに、難しい言葉が多く、肉体的描写も少なからずある為、子供向けではない。
これまで、ジャックが何故か不思議な事に遭遇する理由が理解出来なかったが、
この一冊で妙に納得してしまった。
また、女性にとって困難の時代に、海賊王まで登りつめたエリザベス・スワンの強さが、
エスメラルダやアメニルディスと重なって思い返される。この物語には登場しないが。
読み終えた時の満足と、下巻へのワクワク感が素晴らしく余韻として残る。
買って損はないと思う。