えかきのチャーリー ひみつのかべ (こどもプレス)
何が秘密なのかといえば、そこに描いたことが実現してしまうこと。
絵描きのチャーリーが、壁をキャンバスがわりにしてしまったのは、
まずしくて紙さえ手に入らないため。ハラペコでおいしそうな料理を
描くのみならず、そこへヤンチャな2人組の小人まで加えたところに、
画家ならではのこだわりを感じました。実はこれがポイント。
後で帰宅したチャーリーは、絵の中の肉が部屋にころがっているのを発見。
その秘密を知った彼は、自分の好きなものを、つぎつぎと壁の絵に付け足し
ていきます。絵が実際に動き出す話は、特にめずらしくありませんが、
この作品の場合、描き手の力が問われますね。絵本の中に登場する絵でありながら
絵とは意識させないことが求められるのですから。これがダビンチのように
リアルな壁画だと不気味だし、ピカソのように前衛的だと料理の味もトンチンカン
になりそうだ。その点、山本さんの絵はちょうどよいと思います。
チャーリーの絵筆は緑豊かな町や美女まで生み出し、最後はムフッとなります。
山本弘のトワイライトTV (映画秘宝COLLECTION)
読んでて困るのが難点。
「トランスフォーマー」「ようこそようこ」「トワイライトゾーン」といった、名は知られているが実際に見たことがない人が結構多い作品を扱っているのが嬉しい。CSなどで懐かしい作品が見られるようになった今日こそ、本書の意義が発揮される。
ヤマタケTVヒッツ!~山下毅雄TVテーマ作品集~
同時期にビクターから出た初CD化曲満載の「ヤマタケ・フォーエバー」に較べると普通のベスト盤です。音や選曲に定評のあるテイチク・クロニクルシリーズにしては無難な選曲で、既に「早すぎた奇才・山下毅雄の全貌」シリーズで聞けるものばかり。初心者向けと言っていいでしょう。しかし見過ごしてはいけません、実は貴重な音源も数曲入っているのです! 「ジャイアントロボ」2番抜きショート・バージョン、「怪盗ラレロ」のセリフ入り別バージョン、「時間ですよ〜東京下町あたり」等は多分、初CD化。それになんといっても「佐武と市捕物控」がテイチク・レコーディング・オーケストラによる別バージョンで、全盛期のヤマタケの口笛に伊集加代子の艶っぽいスキャットがばっちりからむ素晴らしい出来! マニアの方はこれ1曲だけでも買う価値あり、と言っておきましょう。
誰も書けなかった日本のタブー (宝島SUGOI文庫)
吉本創業者一族の林マサと会社との内紛劇、
格闘技と暴力団の関係を告発した『週刊現代』記事の全体的な検証、
山口組・後藤組長の米国での肝移植を行うにあたってのFBI・UCLAとの裏取引、
皇后と雅子さんを主軸とする確執と、旧宮家のゲイや皇族商法などの行状、
統一教会の銭集め、
ダライ=ラマを興行として利用する暴力団・右翼・宗教団体、
橋下・大阪府知事の政策検証と、部落解放同盟との関係、
防衛省汚職事件の米をおもんぱかる、法務省・検事総長による事件潰し、
健康食品の錬金術と食品としての危険性、
近親相姦による家庭内での被害、
HIVキャリアの風俗嬢・出会い系サイト利用者、について書かれている。
ヤクザ系なら、溝口敦・魚住昭のように、自らの身を危険にさらして書くライターもおり、一般人にとってもっと重要な判検交流・冤罪など司法の問題、記者クラブとネタ元の行政・司法・立法の癒着、芸能リポーターのプロダクションによる接待攻勢、相撲・野球などメジャースポーツと暴力団との関係等々も読みたかったので、少々物足りなかった。
都市伝説ではないが、その程度の茶飲み話としては使えるが、行動を前提とした真剣な議論の場に持ち出すような話があまり含まれておらず残念。
八人との対話 (文春文庫)
本書はタイトルの通り、司馬さんが著名な作家8名との対話を行った際の対談集である。
単行本は93年に、文庫版は96年に刊行された。それぞれの対談は76年から92年までの間に行われており、主に雑誌文藝春秋に掲載されたものをまとめたものである。
その対談者ごとに展開される話題の豊富さに圧倒される。
話は多岐にわたり、細に分け入り、息つく間もなく読み終えた。
「結局、われわれは自分自身を改良してゆくしかない。人類の仲間たちに貢献し、自分自身の社会にも被害を与えない。
そういう社会を作るには、相当しんどい民族であることは確かですな。(司馬)P54-55」
そういう気分の中で、歴史を通じて現代に警鐘を鳴らし続ける姿勢をそこかしこに垣間見ることができる。
文中「これは」と思える発言がたくさんあるので、閉塞日本を考えたい人にはオススメの書ではないだろうか。