サブウェイ・パニック(The Taking of Pelham One Two Three)
地下鉄ハイジャックを描いた'70年代犯罪アクション映画の傑作『サブウェイ・パニック』のサントラ盤。
ただ疾走するのではなく、力強く前進し刻むリズム、時に音程を乱すメロディや信号機のような音をはさみ、終始硬派で緊張感のあるメイン・タイトルが素晴らしい。
その緊張感とリズムは、全曲に一貫していて、よくあるサントラ盤のような愛のテーマや、つかの間の休息とかの「総花的な曲のならび」にはなっていない、タイトな仕上がりもまた良いです。
エンドタイトルでのみ、後半で初めて安らぎのフレーズが顔を出しますが、その展開は、同時期の「エアポート'75のテーマ」を思い起こさせます。
サブウェイ123 激突 コレクターズ・エディション [DVD]
地下鉄が乗っ取られているのに、その反対車線の地下鉄ががんがん走っているのはなぜ?
NY交通局は、こういう場合は全面的に地下鉄を止めないといくらなんでも危ないのでは。
サブウェイパニック [DVD]
事件そのものは、ただの地下鉄ジャックです。昨今のCG使いまくりの派手派手アクションものと比べてはミもふたもありません。なのになぜ面白いのか? 作品全体を貫くテンポのいいリズム感も心地よく、登場人物の造形、交わされるシャープで巧みな会話と駆け引きの妙。とにかく犯人説得にあたる公安官役のW.マッソーの口からポンポン飛び出すセリフが最高! ラストのストップモーションで終わる彼の表情なんか、この顔がやりたくてこの役を引き受けたにちがいないと思うくらい、キマッています。また、犯人たちが互いに「色」で呼び合う設定が、その後あの「レザボアドッグス」にも影響を与えました。とにかく小意気で、洒落た渋いアクション映画です。数年前にテレビ映画としてリメイクされましたが、配役の点で損してました。W.マッソ-はじめ、犯人役のR.ショー、M.バルサムの両名優もすでに亡くなりました。マッソーはこの時期、D.シ-ゲル監督の「突破口!」という犯罪映画の傑作にも出ています。これも名演、まさに円熟期の出演。早いDVD化が望まれます。
The Taking of Pelham One Two Three
~コッポラの「カンバセーション盗聴」や「大統領の陰謀」等、渋めの映画音楽家っぽいイメージのデヴィッド・シャイアの派手派手なサントラ。ビッグ・バンド・ジャズ・サウンド(ジャズ・ロック・テイストもあり)で、都会派アクション/サスペンス音楽を奇数拍子を交えてブチかましてます。12音階的なメロディーとノリの良いビート、凝ったアレンジ、ジェリー・ゴー~~ルドスミスの得意なパターンでもありますが、彼に匹敵する格好良さを持った音楽だと思います。疑う方は、まず映画を見てみてください。映画ももちろん傑作ですから。~
動脈列島 [DVD]
関西圏では、公開当時に浜村淳氏が例によってラジオ番組で絶賛していたし、「陰に隠れた」ような、マイナーな印象の作品ではなかったのだが…。
(レンタル用のビデオソフトも、比較的流通していたと思う。たとえば『ブルークリスマス』の方が、本作品よりもずっと、中古ビデオ市場でレア物だった)
ついでに言えば、『新幹線大爆破』もまた、当時の国鉄から撮影への協力が得られたわけでもなく、公開当時には、ヒットしたとは言いがたい興行成績であった。その意味では、この『動脈列島』と大差は無い。
本作品と『新幹線大爆破』との違いとしては、『新幹線大爆破』が、ひかり号の走行シーンにミニチュア特撮を多用した(と言うか、国鉄の撮影協力が得られず、多用せざるを得なかった)のに対して、本作では特撮を廃し、よりリアルな映像になっている点が挙げられる。
たとえば、主人公が「スピード0の信号電波」を用いて新幹線車両を停止させる場面では、実際に新幹線と高速道路が間近で並走し、新幹線側がタイミングよく減速する場所を選んでロケを行っている。
また、クライマックスの、ブルドーザーを新幹線線路に落として列車を破壊しようとする犯人側と、阻止しようとする警察側との対決の場面では、実物のブルドーザーが線路のフェンスに肉迫するサスペンスフルな映像が展開する。
こうしたリアリティに加えて、いかにも増村保造監督らしい、主人公と捜査官との強烈な自我の対立を大胆に描いた演出の妙は、まさに傑作と呼ぶにふさわしいものと言える。
多くの方々に見ていただければと思う。