マーチャン大いに歌う
現在はベテラン作曲家として名を馳せる平尾昌晃御大だが、
かつて山下敬二郎やミッキーカーチスと共に、ロカビリー三人男として一世を風靡していた。
本作は1959年にリリースされたセカンドアルバム(なんと公開録音盤!)に、初期のシングル盤からの楽曲を中心に編集された 完全マニア向けのベストアルバムとなる。
しかしむしろ私の様なロカビリー及びカヴァーポップスファンから見ると、最高のコンセプトであり、数多の平尾CDの中ではこれが現在ダントツナンバーワンだ。
1〜9曲目は所謂ライブ音源で、お馴染みのあの楽曲がやけに新鮮である。
続いて繰り出されるカヴァーポップスの嵐。
山下敬二郎との競作「バルコニーに座って」は、彼の楽曲の方が有名だが、聞き慣れるとこちら方がクセになる。
また、ジーンヴィンセントでお馴染み「ジザベル」やポールアンカが平尾の為に書き下ろした「好きなんだ!」など 通好みの選曲が続く。
しかし一番の傑作は「ロック・夕やけ小やけ」であろう。
カントリーやブルースをビートに乗せ歌い、ロックンロールにしてしまったエルヴィス同様、日本人の彼は童謡や民謡をビートのリズムに乗せて歌い上げた。
当楽曲はエルヴィスの「冷たくしないで」風のアレンジに加え、
この時代の日本では珍しい、スラップベースが堪能出来る。
これこそロカビリーファン必聴の一曲だ!
丁寧な解説とディスコグラフィー、カラーでのドーナツ盤のジャケット掲載など、ブックレットも充実しており、
裏ジャケットの若き日の彼の写真は非常にハンサムで思わず見とれてしまうほどである。
残念な部分を挙げるとすれば、レア曲を中心に挙げている為、初期の代表曲である
「リトル・ダーリン」、「クレイジー・ラヴ」、「ダイアナ」、「ロック聖者が街にやって来る」などが未収録な点だ。
もちろん、その辺の曲は他のベスト盤で簡単に入手できる物ばかりであり、
収録時間の制約もあるのだからやはり仕方無いのであろうとは思うが。