去年マリエンバートで [Blu-ray]
豪華絢爛な館も書き割りみたいな脇役たちもシュールなストーリーも素晴らしいんだが、
いかんせん主役のオッサンが大地康雄みたいでイマイチ感情移入できなかった。
もう少しすっきりした二枚目をもってきてればまた違った印象だったのかもしれないが、
これでは気色悪いストーカーにしか見えない。そこだけが残念だった。
モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》フィレンツェ歌劇場2003年 [DVD]
古くはベームのベテラン歌手を総動員したものから最近収録されたものまで、ほとんどのフィガロを見ていますが、これは数あるフィガロの中で最上位と言ってもよいと思います。イタリア人中心のモーツァルトはイマイチという偏見がありますが、これは文句なくすごいです。特に若い歌手が素晴らしい。伯爵夫人はスザンナを演じても良いくらい若い。スザンナは、逆に伯爵夫人を歌ってもよいぐらい風格がある。ケルビーノは、中年のおばさん然とした歌手が歌っているケースもよくありますが、このDVDでは、美少年らしくて好感を持ちます。伯爵とフィガロはどちらも素晴らしいバリトンで、私個人としては、逆の役回りの方が良いと思いました。現にベルリン国立オペラでは、ガロがフィガロを歌ってました。メータの指揮も素晴らしい。ムーティのような凝集力はないかも知れませんが、力づくの強引な面もないので、モーツァルトにはよくあっているのかもしれません。10年近くもウィーンの監督のポストにいながら、何の実績も残さなかった(というよりあまりの不人気でスタンダードな名作オペラの指揮を一切させてもらえなかった)某国の名指揮者とは、所詮持って生まれた音楽性が違うようです。メータを見直しました。後宮からの誘拐も良かったです!!
ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」全3幕 [DVD]
~1969年のハンブルクの新しいシーズンは8月15日に始った。初日は『トリスタン』で、レーオポルト・ルートヴィヒが類稀な優れた指揮者であることは、数少ないレコードで知っていたが、ニールソンのイゾルデ以上に感動したのはオーケストラの美しさだった。たしかその二日後に『マイスタージンガー』があって、トッツィ、ヴィートマン以下何人かの歌手がこのDVDと一~~致している。しかし優れた歌手とみごとなオーケストラを足し合わせても、感動を与える上演になるものではない。とかく退屈な場面になりがちな第一幕の親方達の場面を、一人一人に血を通わせて、暖かみのある魅力的な場面に仕立てたのは、指揮者の功績である。最近はやりの、一人よがりの矛盾だらけの演出と異なり、自分をひけらかさない演出家の功績も!大きい~~。この上演に再び巡り会えたことは、望外の喜びである。特別の理由からお願いしたいのは、ドレースデンにおけるビシュコフ指揮テーオ・アーダム演出の『パルジファル』もぜひ発売していただきたいということである。音楽的にも劇的にも、この『マイスタージンガー』と同様に珍しい理想的上演である。~
涜神
手に入る文庫本サイズの素晴らしい一冊。
深淵にして、簡潔。明快に哲学的思弁の途につくことができる。
数々の章に分かれていて、いずれも興味深いが、やはり一番興味深いのは、表題にもある「涜神、礼賛」である。欧米語の「涜聖」は「profane」であり、聖なるものを人間界に引き摺り下ろすというラテン語に由来しているらしく、神なる物は神の領域に留めておかなければならないというギリシャ=ローマの古典思想が背景にあるらしい。
それの対義語「聖化」は「sacre」であり、聖なるものへと人間界から供犠として上げるという意味らしい。
しかしこの「sacre」なる言葉は、両義的であり、聖化という意味と他に、呪われている、排斥される…という意味もあるらしい。
そこら辺から、彼の主著たる「ホモ・サケル」に繋がっていく。
「ホモ・サケル」とは、決して供犠と成らない、聖化できない、殺害可能の存在の意味らしい。