パゾリーニ・コレクション ソドムの市 (オリジナル全長版) [DVD]
まだビデオテープだったころにレンタルで観ました。当時10代。とっかかりは当然ながら興味本位でしたが、痛烈なしっぺ返しを食らいました。映画における残酷表現の極北と言っていいでしょう。当時はもう2度と観たくないとも思いました。
作品そのものの分析は、さまざまなコラムで論じられている通りだと思います。ただ、10数年以上たった今、ふと、「また観てみるべきか」と振り返る時があります。そして、何故かこのレビューに書かれた一人ひとりの感じ方をつぶさに読み込む自分がいます。
ひと歳とって、世の中のいろんなことを見聞きしたせいでしょうか。現時点では、観ようと思いつつも再び手を伸ばすに至っていません。とはいえ、生活上のちょっとした起伏を引き金に「何かを確かめてみたい」と期待させてしまう引力が、この作品に潜んでいるような気がします。
自分は一体、何で「映画」を観るのか。観たら確実に嫌な思いをするこの映画に、何を求めているのか。営みの根源的な部分につけ込んでくる作品です。
鬼才ピエル・パオロ・パゾリーニ 3枚セットDVD ~生誕90年特別限定セット~
「アポロンの地獄」はイマジカ(パイオニアLDC)から初DVD化されたときのものを所有し、「豚小屋」はイマジカ盤をSPO盤に買い替え、「ソドムの市」はSPO盤(オリジナル全長版)を買って視聴したものの、そのあまりに呪われた内容ゆえに手放してしまいました。しかし、パゾリーニ映画祭で実行委員長を務めた大島渚監督の「難解な作品はまた見たくなる」のとおり、また見たいと思っていた矢先、いかにも妖しげなパッケージで、しかも単品販売せずにボックスの中の1本としてひっそりとカタログ化されていたのに飛びつき購入しました。画質については、SPO盤も良かったのですが、今回のもかなり良いほうだと思います。ただし、旧盤では無修正でバッチリ映っていた部分が、ほとんどボカシが入っています。無修正版でも局部などは作り物然としていてちょっと拍子抜けしましたが、ボカシでもまあしょうがないと思います。
「アポロンの地獄」と「豚小屋」は画質が大変素晴らしいです。特に「豚小屋」はシンメトリーの構図も美しいですが、画質がとてもキレイです。欲を言えば、音声がイタリア語だけなので、英語音声も入れてほしかったです。
アポロンの地獄 ニューマスター版 [DVD]
近年、村上春樹氏の「海辺のカフカ」でもモチーフにつかわれた
古典悲劇です。「オイディプス・コンプレックス」との心理学用語
でも有名な話です。それを、当時世界最高峰たる表現者として
数々の問題作を世に問うていた監督が原作に沿って映画化しました。
プロローグ、本編、エピローグと、場面が現代と古代ギリシアに
移り変わりますが、なんの違和感もなくストーリーが連続してい
くことに、ありあまる才気を感じます。
もう個々のシーンが突き抜けています。CG技術は「文明」ですが
表現手段たる「文化」は最新の文明技術を前にしても、なんら古さを
感じないことに今更ながら驚かされます。
ソドムの映画市―あるいは、グレートハンティング的(反)批評闘争 (映画秘宝collection)
この本を国会図書館で読んでいた自分に失望した記憶がある。自分とは全く違った視点で同じ風景を見ている人という印象を持っている。
ソドムの映画市―あるいは、グレートハンティング的(反)批評闘争 (映画秘宝COLLECTION (2))
中原昌也氏が70年代のゴア系や胡散臭系の主にスプラッター映画についてあの独特の文体で語りつくす異色の映画エッセイです。非常に濃い内容ですが、氏のファンは必読です。