瞳に映るは銀の月―妖精計画 (Pシリーズ)
著者のライフワークとも言える「Pシリーズ」の新作。
過酷な環境の中を生きる、心優しい超能力者たち。今回の主人公はテレパシー能力を持つ少女、ミリアム。その能力のゆえに家族と引き離され、親しい友人も作れぬままに「妖精計画」によって次々と転校させられる。そんなミリアムに訪れた少年との出会いが、彼女の運命を変える――。
ハヤカワ文庫「夢の果て」全3巻につながる物語。キャラクターの成長した姿に再会できるのが嬉しい。
瞳に映るは銀の月―地上の園 (Pシリーズ)
ネタバレになるのでストーリーには触れないが、“Pシリーズ”で最高の大団円の巻でした。
このシリーズを読んだことがないという人に説明すると、
放射能で汚染された地上を逃れて地下都市で暮らす未来の地球では、
超能力者たちが「混乱させる者」“P”と呼ばれ迫害されているという設定だ。
この“P”たちの迫害と抵抗の歴史を描いているのがこの壮大な“Pシリーズ”だ。
SFファンにでなくとも一読をオススメしたい傑作マンガです。
きっと友人にも薦めたくなる作品となるでしょう。
なお、折角読むのでしたら、前作『瞳に映るは銀の月―妖精計画』も是非一緒にどうぞ。
そしてシリーズで最も長編の「夢の果て」ハヤカワ文庫JA(早川書房、全3巻)も。
銀河鉄道の夜 (ホーム社漫画文庫) (MANGA BUNGOシリーズ)
少女漫画のキャラクターは苦手なのですが、
読み始めてすぐに、ささやかな嬉しいカットがあった。
活版所の賃金をもらって、うれしそうに駆け出す場面。
私が勝手に想像する程ジョバンニは悲観にくれているわけではなく、
目の前の喜びに素直に反応する男の子。
子供の健やかさがわかる、原作最終形態の中でも大好きな場面なのですが、
さらりとかわす作品が多いなかで、忘れずに描かれていました。
その他にも原作を忠実にトレースすることに専念した気配が全編に感じられます。
出版社や担当から無理強いされた訳ではない、
北原文野さん自身が「銀河鉄道の夜」をよく分析していることがわかる仕上り。
小さな文庫サイズが、繊細なタッチをより印象付け、
「カラーで見たい」と思わせるページも多数あります。
そして、感傷過多にさせない、潔いラストカットも見事。
絵柄に対して好き嫌いはあっても、
漫画家さんの真摯な仕事ぶりには、誰もが賞賛できるはずの佳作です。