バルト―距離への情熱 (哲学の現代を読む)
著者はこの本を「バルトの誘い水となるような入門書」と読んでいるが、この点については私も概ね同感である。ただし、同じく筆者が言うように、本書は決して「わかりやすく解説するという意味での入門書」ではない。フランス思想の基礎知識を持たないものが内容を把握するのは、決して容易ではないように思われる。学部専門課程以後に読むのが適当であろう。
書くという行為は、悲しくもその中に宿命的な主観性を宿してしまうが、とりわけバルトにおいてそれは不可避的である。「固まること」を最も嫌い、生涯スタイルを変化させ続けたこの書き手においては。したがって、ここに提示されているのは、あくまで著者におけるバルトであり、もっと言えば著者そのもののフィギュールにほかならない。それを受け入れるかどうかは、もちろん読者の自由である。
ちなみに、著者は私の直接の師である。尊敬を込めて。
フランス現代思想を読む
フランス現代思想の作家、そうそうたるメンバーでこの本は構成させています。とかくフランスの思想はわかりづらいのですが、この本にはキーワードがついていて理解しやすいです。エスプリの効いたフランス思想を理解してみて下さい