春よ、来い (Volume1) (アッパーズKC (39))
『太陽が落ちてくる』の連載の頃は、単に男性誌によくあるHマンガというイメージであった。実際、AV監督のお父さんという設定自体が、それ形の売れ線を狙っているのがよくわかった。内容も実際、Hありきだったし。妹がレズで、同級生の女の子と駆け落ちして東京で独り暮らししている高史のアパートに転がり込んでくる、という設定自体が、同じ路線まっしぐら、だと思っていた。この手の作家は、絵が飽きられると消えていくんだよね~と早々に消えると思っていました。しかしさすが11巻まで続いただけあって、4~5巻からキャラがひとり立ちしてH描写よりもキャラの心理描写が深まっていきます。実際、後半はメジャー級の感触がしており、この次の作品がメジャー路線の『やまとの羽根』というバトミントンマンガになっていることからもそれがわかります。こういう作者がはっきり成長していくのを見ると、けっこう感動しますね。Hマンガから入った方が、実際には恋愛はよく描けるんですよね~。流されていただめだめ高史が、大人になっていく様はなかなかに見事なビルドゥングスロマン。たぶん女性が読んでも、かなり面白いのではないでしょうか?。
なぜ春はこない?
人生にはサイクルがあって例えるなら春夏秋冬のようなものである、それぞれの時期にはそれぞれに合った行動や準備をしていれば人生全く怖くはない、という本書の考え方には賛成でその通りだと思います。そういった意味ではとても参考になりました。
ただ九星と同じく、同年生まれの人はみんな同じサイクルなのでそれはどうなのかな、と思いました。この年齢ではこうなりやすいというような傾向はあると思いますが、私の場合は当てはまりませんでした。
考え方では得るものがありましたが、生年月日を占いに当てはめて今あなたは春です夏ですというのは少し無理があるような気がしました。
図書室の海 (新潮文庫)
短編集のタイトルは著者が収録されている作品のなかから選ぶものです。今回のタイトルとなった「図書室の海」は処女作「6番目の小夜子」の中でちょっと触れられた設定を上手く飛躍させた見事な逸品です。いくら短編とはいえ、ちょっとした設定をあそこまで上手く書ける人は少ないでしょう。
そしてここ2、3年で10冊近い本を書いた(しかも全てが奇天烈な設定)著者の、限りない創作意欲と想像力とを見せつけるかのような1冊。オススメです。