果断―隠蔽捜査〈2〉 (新潮文庫)
この作品は、「隠蔽走査」の続編です。
前作で主人公の竜崎は、警察庁のエリートキャリア官僚でしたが、息子の不祥事のために、大森署署長へと飛ばされてしまいます。
やはり相変わらずの朴念仁ぶりを発揮して、何事も正論で、合理性を追求するやり方は、方面部長とのいさかいに発展したりと、少なからずトラブルも起こします。
そんななか、立てこもり事件で、弾切れだった立てこもり犯が、SATの突入により射殺されたことから、世間の批判を浴び、現場の指揮を執っていた竜崎は厳しい立場へと追い込まれます。
この事態をどう打開するのか。
最終的にはやや都合のよい落ちで、その点は残念でしたが、これまでにない警察官僚という立場から事件を描いているという新鮮さがあるのと、非常に魅力的な竜崎というキャラクタで、楽しんで読むことができました。
おすすめできると思います。
今野敏 沖縄空手 首里手の探求 [DVD]
私の勝手なイメージとして、今野敏という人は、非常に合理的な思考の人だと思う。
書く小説も、無闇に情緒を煽るような比喩表現は極力排し、単刀直入に、淡々と書き連ねていく。
そんな印象がある。それは、この人が武道家という側面を持っていることと関係している気がする。
このDVDも、云わば実用書であり、沖縄空手を紹介するアイテムにありがちな歴史観・達人たちの偉大さ・稽古の際の心構え…等といった、云わば蛇足(と書いてはあれだが)的な紹介は排し、専ら自身の習得してきた首里手(ショウリンリュウ)の技術考証・紹介にスポットを当てている。
氏の書く文章同様、極めて合理的・且つ・単刀直入な構成になっている。
紹介されるのは、首里手の型、その分解、応用・実演であり、フルコンタクトや伝統派のような組手はないのでその点は悪しからず。
そして棒術。それらの実技紹介は、「今野塾」のお弟子さんたちと、今野敏本人が行っている。
氏は、著作の膨大さに比べると、メディアに登場することが殆どない。本作は小説家としてでは無く、飽くまで一人の空手家としての今野敏を映像を通じて観ることのできる、貴重な作品である。同じ空手修行者も、今野敏のファンも、観て損は無い一本である。
個人的には、特典収録のロシア支部での実技指導の模様が興味深かった。
転迷―隠蔽捜査〈4〉
自分が望むと望まざるに知り得た情報を、適宜しかるべきところに
知らせる‘隠し事をしない’竜崎は「隠蔽捜査」の基本設定。
それに「果断」から、部下を信用し署員たちを守り、事があれば
責任はすべて負うという、一国一城の主の意気が加わる。
今作は「疑心」のアレは何だったの?というほど、いつもの竜崎に
戻っているが、強いて言えば戸高への信頼感と似た者同士の親近感
を持ったのが「疑心」。
そして、「初陣」以来すっかり竜崎依存症(笑)になってしまった伊丹。
シリーズを通して描かれてきたおなじみの設定が楽しめます。
今回、各事案を通して竜崎と関わってくるのは、勤め先は違えど
キャリアばかり。
率直で合理的で国のために尽くすことが最優先な彼の信条が彼らに
伝わるのか?
どうしても竜崎のキャラクターで持っている感は否めないけれども
このシリーズはそれを楽しむのがメインなので満足です!
ハンチョウ~神南署安積班~ シリーズ4 DVD-BOX
俺は俳優、佐々木蔵之介が好きだ。酒蔵の息子さんらしいが素晴らしい役者さんになったなぁと、ちょっと前から注目していて彼が出演する作品は、ほとんど観ている。
そんな佐々木蔵之介が演じる安積班長を始めとするキャストは信頼関係が、とても理想的だった。
今の時代は個人、個人の世の中になってしまっていて誰かを信頼するという事が、とても難しくなってしまっている。平気な顔をして近づいてきて裏切られ残念な思いをする事も少なくない。
しかし、この作品は安積班長を中心に非常に、まとまっていて、やはり信頼される、信頼できる仲間というのは貴重だと実感させられた作品であった。
そんな安積班は素晴らしいチームだった。
ハンチョウ~神南署安積班~ シリーズ3 DVD-BOX
子供向けの勧善懲悪と違い、犯罪を犯す側の人間には複雑な事情があるということ、善と悪とは絶対的なものではないということを丁寧に描いていると思います。
原作者がファン、というのも、リップサービスではないでしょう。黒谷友香さんのドラマオリジナルのキャラクターを逆輸入されたくらいですから。原作者から太鼓判を押されるドラマというのはさすがに世界観を体現しているのだと思います。
それから、ゲスト出演される俳優さんは、シリーズを追うごとに豪華になってきてませんか?もちろん、人気とか著名度だけでなく、実力という意味でも、安積班長との対決が楽しみな方が増えてきて、次のシーズンが待ち遠しくなります。佐々木蔵之介さんを以前からいい役者さんだと思っていて、佐々木さんが主演されるということで見始めましたが、この作品が佐々木さんの代表作になると思います。ほんとにはまり役です。