あらくれ (講談社文芸文庫)
『あらくれ』です。日本自然主義文学の代表作的位置づけだそうですが。
そういう難しいことは分からなくても、現代における月九のドラマを観るような感覚で楽しめると思います。
年頃のきれいな娘であるお島が主人公。結婚の日に飛び出して、自由だけど険しい道無き道へと走り出します。
あまり人間関係に恵まれない環境、仕事、結婚などを通して、当時の庶民女性の生き様、を活き活きと描いています。親の言いなりで結婚して終わりというのが普通であるはずの当時の女性としては、かなり激動の半生だと思いますが。
お島は頑張りますが、必ずしも全てが上手く行くわけではありません。学も無いですし、なんだかんだいって男に振り回されたりすることもあるし、自己責任もあるし……
でも失敗しても負けずに強く生きていくお島のさまは、現代のドラマで描かれているヒロインと同様で、時代を選ばぬ普遍を秘めているようです。
文章は、昔の文豪らしく、読みやすくありながら語彙も豊富で厚い描写で楽しませてくれます。上記の通り内容も波瀾万丈なので、エンターテインメント的に面白い作品です。
百年小説
近代文学で有名作家の代表作品(短編)が一冊にまとめてくれたものがないか。
その願いをかなえてくれるのが本書である。1330頁に51編の名作がほぼ丸本の形で収載されている。活字が大きく、総ルビなので読み易い。
中島敦の『山月記』、太宰治の『富嶽百景』などは言うまでもなく、ややなじみの薄い坂口安吾の「波子」、梶井基次郎の「闇の絵巻」など掘り出しものも入っていて、楽しめる。
紅露逍鴎と言われた明治の文豪作品からプロレタリア文学・私小説をも含め、最後は昭和23年情死した太宰治まで広く作品を網羅して豪華な一書となっている。
黴 (岩波文庫)
硯友社時代からの息の長い秋声の枯れた文業(この際代作問題など関係ない)。
笹村とお銀の別れそうでなかなか別れられない、男女の機微、
諦観あふれる筆致があじわえればこの作品は忘れられない思い出になるでしょう。
でも書評子の一押しは未完に終わりましたが「縮図」かな。
あらくれ (岩波文庫)
『あらくれ』です。日本自然主義文学の代表作的位置づけだそうですが。
そういう難しいことは分からなくても、現代における月九のドラマを観るような感覚で楽しめると思います。
年頃のきれいな娘であるお島が主人公。結婚の日に飛び出して、自由だけど険しい道無き道へと走り出します。
あまり人間関係に恵まれない環境、仕事、結婚などを通して、当時の庶民女性の生き様、を活き活きと描いています。親の言いなりで結婚して終わりというのが普通であるはずの当時の女性としては、かなり激動の半生だと思いますが。
お島は頑張りますが、必ずしも全てが上手く行くわけではありません。学も無いですし、なんだかんだいって男に振り回されたりすることもあるし、自己責任もあるし……
でも失敗しても負けずに強く生きていくお島のさまは、現代のドラマで描かれているヒロインと同様で、時代を選ばぬ普遍を秘めているようです。
文章は、昔の文豪らしく、読みやすくありながら語彙も豊富で厚い描写で楽しませてくれます。上記の通り内容も波瀾万丈なので、エンターテインメント的に面白い作品です。
仮装人物 (講談社文芸文庫)
徳田秋声は明治時代から自然主義文学の代表作家として作品を発表していたが、地味な作風なのでさして本が売れず、大正時代は生活のために通俗小説を書き散らしていた。昭和になってしばらくしてこの『仮装人物』と未完に終わった『縮図』を書き遺して、死去した。『仮装人物』は、50代で妻に先立たれた秋声が作家志望の若い美女と実体験した愛欲の諸相を描きこんだ私小説であり、『足迹』や『黴』といった初期作品のそっけない文体から離れ、豊潤な筆致で変転きわまりない女と翻弄される自身を描ききっている。その芸術的完成度の高さにおいて、これは日本私小説の最高峰ではないかと思う。