影執事マルクの決断 (富士見ファンタジア文庫)
違和感。
そう、違和感と言ってしまって良いだろう。
これまでのマルクとは何か違う。
旧来の保守的な、いかにもファンタジア文庫と言える、表現の過激さを抑えしかしギリギリのラインを探るような慎重さは見当たらない。
しかし、MFか!とツッコミを入れたくなる表紙から口絵の演出や何か枠を外した開放感すら感じる、スピード感のある文章は、クライマックスに向けた加速を印象付ける。
ちょっとした事だけれど、「死」に関する扱いが軽くなったようであり、しかしそれは最近の傾向として、求められる過激さに対応しただけかもしれない。
特にジェノバについては全く新しいキャラに仕上がったかの様でもあり、この変化の象徴的存在になった。
これはこれで魅力があるが、何かこう、友人達が先に大人になって置き去りにされたようなノスタルジィすら感じたのは、思い込みだろうか。
個人的にはこれまでのどこか“甘さ”のあるマルクシリーズが好きなので、違和感と少し残念さは否めない。
だが、結末に向け動き出したのだから、最後まで付き合おう!
だから早く次出して下さい。