鉄道業界のウラ話
事件にしろ自殺にしろ、アパートで人が亡くなると、後片付けをする人がいる。電車に轢かれた人がいれば、汚れた電車をきれいにする人がいるはずでである。
人身事故で電車のダイヤが乱れたとき、誰がどこでどのような掃除をしているのか、なんとなく考えていたが、この本でじっくり読んでしまうと、気分が重くなる。真実の姿を知ることは、大切なことではあるが、知ってしまうと、後々まで夢にうなされるような方は、読まないほうが無難かもしれない。
鉄道とは労働組合の世界だという話は、とても興味深いものがある。本来、労働者のためにあるはずの組合が、組合のための組合になって、会社側の人間を罵倒するだけでなく、対立する組合まで罵倒する。ごく一部の組合だけなのかもしれないが、亡き父が会社勤めの頃、何回となくぼやいていた。
鉄道マニアにかんする話も面白い。一般人の想像を超えるところに、至福の時間があるのがマニアなのだと思う。
この本は、2010年に刊行した単行本を文庫化している。あとがきで、鉄道こ関するこの2年間の動きを簡単に解説している。たった2年だけれど、大震災があっただけに、大変な2年だったという感じがする。震災で鉄道が止まってしまった翌日が、九州新幹線全線開通というのも、どんなことがあっても少しでも前に進んで行く鉄道の元気さを表しているようで、不思議な巡り合わせだと思う。