年金倒産 ― 企業を脅かす「もう一つの年金問題」
制度を”年金飢饉”と改名するのがピッタリと感じてます。まさに今の日本全体を象徴するような制度ですね。キキンに苦しむ零細事業者としては、もう10数年も早く本著に出会っていればと恨まれます。官製詐欺のような本制度のAtoZはその詳細をわかり易い本著に譲るとして、小社の加入する某キキンの実例を紹介して本制度の不実さを実感していただければ幸いです。当キキンは金額ベースでの成熟度がかろうじて100%未満、代行部分での積立不足金はない(との事務局説明)どうにか健全なキキンです。そのキキンですら、上乗せ部分に対して加入後10数年の間に退職者に支払われた一時給付金と任意脱退による在職者への給付見込一時金の累計額が当該期間の払込掛金総額の80%強、更には任意脱退を選択してキキンに一括納付を義務づけられる特別掛金が、払込掛金総額の90%、株取引や投信だと言わずして何でしょう。長いレビューとなりました、すみません。
会社の年金が危ない―厚生年金基金・適格退職年金はこうして減らされるそして会社は行き詰まる
企業年金の何たるかを知りたい人には最適の入門書だと思います。
図書館で閲覧後、手元に置いておきたくて購入しました。
実録!厚生年金基金脱退とM&A・ICのはなし
厚生年金基金は近い将来破綻する。
人口構成の将来予測を見れば、小手先の改革などでは、この問題はなくならない。
昭和30年代の、高度成長期の遺物とは、はやくおさらばしなければならない。
国民年金制度にしても、赤字補填のために税金投入というのは、ブラックジョークにもならない。
国民皆保険制度の廃止とともに、年金制度の廃止は、わが国の喫緊の課題であると個人的には思う。
一般家庭は、収入にあわせて支出を決める。
政府は、支出をさきに決めて、金は税金で無償で巻き上げるという、本末転倒の経済感覚を持っている。
ない袖は振らない、という根本に立ち返るべきだろう。
それはともかく、厚生年金基金脱退はトレンドになりつつある。
財務体質の弱い中小企業にとっては、命取りにもなりかねないイッシューだ。
担当者にとっては、何が問題で、どういう絵を描くことになるのか、わかりにくい部分である。
ここ10年で、基金がらみの裁判例はいくつかあるが、いずれも特異なケースと思われ、いま現在の課題解決の指針になるかどうか。
各社検討していると思われるが、いずれも対外厳秘の機密事項であるから、
日本企業が好きな、いわゆる、「他社動向」というやつは、そう簡単に見えてこないのだ。
本書は、多少エキセントリックな書きぶりではあるが、非常にわかりやすい。
そもそも厚生年金って何、という人でも、本書を最初から読んでいけば、問題の所在が見えてくるだろう。
マニアックになりすぎず、イメージをうまく伝えている。
1時間もあれば読める。
この簡潔さが、中小企業の経営者向けだと思うゆえんだ。
時間のない経営者が、じっくりと年金制度のウンチクにつきあっているヒマはないだろう。
短時間で方向性をつかむ、これが大事。
本書の内容を見ても、大企業ではなく中小企業の、しかもオーナー社長向けだと思う。
もちろん、非オーナー企業でも上場企業でも、参考になる点はある。
データも、直観的なまとめ方をしてあり、頭に入ってくる。
著者はM&Aスペシャリストだそうで、本書に言及もある。
厚生年金基金脱退は、M&Aとセットになっているわけではない。
経営課題でなければ、無視しても差し支えない。
ICというのも、聴きなれない言葉である。
集積回路ではない。
サムライ稼業の仕事形態を紹介しているのであるが、これも厚生年金基金脱退とは無関係。
制度設計とか、リーガルリスクの評価は、さすがに本書では無理。
あくまで、方向感をつかむ本。