ルール (集英社文庫)
「死人の肉を食うべからず」
史上最も愚かな通達。
味方であるはずの同胞で奪い、襲い、だましあう。
飢餓がつくる地獄絵図。
戦争のおろかさと、愚直なまでの日本人の姿、それでも仲間を守る精神になんともいえない感覚になります。
この作品はフィクションですが、先日TVで「同胞はみな、参謀・指揮官に恨みを抱いて餓死していった。」と出征されていたご老人が悔しげに語っていました。
外交の失敗を血で償わされるのはいつも末端の一般兵。
アンノウン (文春文庫)
航空自衛隊レーダー基地の隊長室の電話機に盗聴器がしかけられていたため、防衛部調査班から幹部が派遣されてくることになった。
犯人は?そしてその目的は?
防衛部調査班の朝香二尉のサポートをすることになった、監視隊の野上三曹の語りで描かれています。
野上三曹は22歳で入隊4年目。
レーダー基地内の習慣や仕事についてはあたりまえのこととしてさりげなく説明されますが、盗聴器の事件の捜査をする朝香二尉の行動の不思議な点などについては、読むこちら側と同じに「変なことをする」という視点から見ているので
とても読みやすく計算された筋立てになっています。
識別不明機(アンノウン)を発見した際のオペレーションルームの緊張感が見事に描写されていて興味深いものになっています。
謎を解き明かしていく過程に無理がまったくなく、また犯人の動機やその後の処理なども納得がいく筋立てになっていてとても面白かったです。
なにより、野上三曹の成長が清清しいので読後感がよい面白い本でした。
ニンジアンエ
昭和18年、ビルマに赴任した従軍記者・美濃部は、
早速、宣撫(ニンジアンエ)隊に帯同して現地人の村を
回って取材を始めるが、やはり従軍記者の見せ場は
戦闘場面だ。
志願して、後方攪乱を狙う小規模のイギリス軍の
討伐取材にも参加する。
敵を追って村々を通過するうち、美濃部が感じる
敵の逃避行動の不自然さ。
得体の知れない不安。
そして衝撃の事実が判明する…。
ビルマは英国領で、かつてはインド帝国の一部であった。
蒋介石を支援する「援蒋ルート」にもなっており、ビルマ、
インド、中国、イギリスなど各国の人間が出没していた。
そのような背景の下、捕虜となったイギリス人将校、戦友を
殺された日本軍の下士官、ビルマ人の通訳、インド人兵士、
それぞれの思いと使命、立場や意地が綾なし紡がれてゆく。