Marc-Andre Hamelin Live at Wigmore Hall
1994年6月、ロンドン、ウィグモア・ホールでのライヴ録音。ピアノはスタインウェイ。あらゆる意味で自身が史上最強のピアニストであることをマルカンドレ・アムランが証明したアルバムだと思う。
それは何故か。曲目が実にアムランの特徴と意図を良く表している。つまりこの演目はアムラン以外演奏不可能だからだ。最初の曲はベートーヴェンの名を借りたアルカンの編曲モノで、ピアノとオーケストラを一人で演奏しているという超絶技巧曲。次の曲もショパンの名を借りたバラキレフ編曲のピアノ独奏版で、これもいわばピアノとオーケストラを一人で演奏しているという超絶技巧曲。次がアルカンで左手だけ→右手だけ→両手というエチュード。次がカルメン変奏曲でブゾーニの作品でありながら、あらゆる演奏テクニックで最もアムランらしさ満載。最後が知る人ぞ知るメトネルの『忘れられた調べ』の第3曲。うーん、凄いプログラムである。しかもこれがライヴなのである!!!
このアルバムはピアノをそしてピアニストを知る人ほどその凄さにうなされるだろう。悪夢のような現実である。
Kaleidoscope: Marc-Andre Hamelin
アムランは本当に素晴らしい!
超絶技巧を超えた技巧で難曲を次々と弾き倒し?聴く者を圧倒させます。一体今まで聴いてきた曲は何だったのか?と、感性を塗りかえらせる宝の山です。どれも今まで聴いていたはずの曲ではない、全く違う光り輝く世界です。
もしもピアノ界の頂点があるなら、彼こそがその地位にふさわしいとさえ思わせます。
まず一番のEDNA BENTZ WOODS のValse Phantasique から圧倒されます。モシュコフスキーの練習曲は、「練習曲」をどう弾くべきか、非常に勉強になりました。
また、ヨーゼフ・ホフマンの「カレイド・スコープ」は、ホフマンの弟子のチェルカスキーの演奏との聴き比べをしましたが、難曲を全く揺らぎを見せないどころか、余裕たっぷりに弾きこなし、神秘なまでの美しさと個性で、ホフマンの弟子さえ寄せ付けない素晴らしさでした。
最後のカプースチンのトッカーティナop.36 は本領発揮。言うことなし!百見は一聴にしかず!
アムランファンもそうでない方もぜひお聴き下さい。
Complete Piano Sonatas
まさに完璧と言っても言いテクニックです。ミスのようなものは無く
(本人曰く、1つだけ譜読み間違いがあるそうですが)
難易度の高い曲をここまですいすいと弾けるものかと呆れるほど。
他の録音でここまで完璧な者は無いでしょう。
だが、それが故のスポーティーさは、逆にこれらの作品が持つ
鬱屈した面や神秘的な面を、十分に表現できているのだろうか、
という気がします。鬼気迫る感じというのがどうにも聞こえてこず、
常に80%ぐらいの、余裕を持って演奏している感じに聞こえます。
良くも悪くも、アムランの音はきわめて「明」の演奏なんですよね。
これは、スクリャービンに限らず、他の録音にも言えることなのですが。
とはいっても、スクリャービンの録音で満足できる者は少ないため、
これは買って損のない録音です。