One Word Extinguisher [解説・ボーナストラック収録・国内盤] (BRC73)
エディットを多用したデジタルHIPHOP。
高度なテクニックをもち、同系等の音を出しているクリエイターなら他にもいるだろうけど、
その中でも彼は音選びのセンスがずば抜けて優れていると思います。
部分的に見ればとても先鋭的な音なのに、全体としては非常にポップな印象がある。
もちろんそれが彼の編集能力の高さの証明なのだけど、それ以上にオールドスクールのジャズやHIPHOPへの純粋な憧れや、それらのもっているエモーションが音の向こうから伝わってくるのが、このアルバムをここまで感動的なものにしているのだと思います。
傑作と呼ばれた1stを上回る本当に素晴らしい、ジャンルを問わず多くの人に聴かれるべき作品です。
ESKMO (ZENCD161)
L.A.〜世界中でブームを巻き起こしている次世代ビートシーン
のなかでも、さすが NINJA Tune と契約しただけあって
音の作り込みが非常に繊細で、温かく、ヘッドホンで聴くと至る所から
音の粒子が周囲を包み込んで至高の時間と空間を与えてくれます
来日も決まっているようなので、是非フロアでもこの至福の空間に包まれたくなります
Vocal Studies + Uprock Narratives [解説・ボーナストラック付き国内盤] (BRC38)
SAVATH&SAVALAS、Deralosa and Asoraなど
複数の名義で活動する才人スコット・ヘレンのキャリアの中でも
もっとも評価が高いのがこのPREFUSE73だと思う。
細かく裁断されカット・アップされた声の断片、シャープなデジタル・グリッチ、ジャジーなサンプル。
PREFUSE73はこれらの三位一体の要素が複雑なサウンド・コラージュによって切り貼りされた、
きわめて近未来的なデジタルHIPHOPサウンドに仕上がっている。
先行シングルとしてカットされた冒頭のRADIO ATTACKから恐ろしく複雑で破天荒な展開が広がっているが、
全体としてのイメージは非常にキャッチーで聴きやすい。
日本盤にはボーナストラックが1曲収録されていて他の収録曲にも劣らない出来ではあるが、
The Only She Chapters [解説付・ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRC291)
アトランタ出身のミュージシャンGuillermo Scott Herrenのプロジェクトの1つであるプレフューズ73。
彼はエレクトロ・ミュージックの中でも、ヒップホップのリズム感をキープしつつ、音色や旋律の展開で勝負するスタイルを、かなり早い時期からやっていたパイオニアの1人だ。
このスタイルは日本ではヌジャベス系のわかり易い方向性が支持を受けたため、そういうキャッチーな音要素をヒップホップのリズムでやるという認識の人が多いのではないだろうか。
しかし本来は、リズムを固定させる事で、より音色の存在感を強調し、その多様性・可能性を楽しむ事を目指したスタイルだったはずである。
プレフューズ73も、ある程度は大衆を意識してポップでわかり易くしているのがわかるが、どの作品も音色の多様性を重視し、その可能性を追求する実験的な姿勢も含めて楽しんでいる。
特に今回のアルバムは、従来のプレフューズ名義でのポップな価値観とは違うアプローチがされており、より強い実験性を感じる。全体的にはサヴァス・アンド・サヴァラス名義の方がしっくりくる感じのメロウな音世界だが、その中でもエキゾチックでダークな空気感が際立っている。
もちろん今回もプレフューズ73らしい複雑でアグレッシブなサンプリングは健在だが、明るくポップにというより、荘厳な雰囲気を高める方向の音処理が施されている。トリップ感は濃いが、パーティソング感覚では聴けないかもしれない。