かめくん (河出文庫)
僕はもともとカメが好きで、この本もタイトルにひかれて 買ってみました。だけどこの本はただのカメ好きのための本ではなく、周りの人と、カメに似せて造られた主人公「かめくん」との心温まるふれあいや、その「かめくん」 が考える、人とはまるで観点の違う世界観を、ほのぼのとした町を舞台に、ほのぼのとした「かめくん」の私生活を
通して楽しみながら読むことが出来る、心温まる本なんです。読んでると、不思議と笑みがこぼれてきます。 イライラしてる時なんかは、これをちょっと読んでみて下さい。癒されますよ。
かめ探偵K (メディアワークス文庫)
毎度お馴染み、かめです。
かめだから、安心です。
今回のかめは、ちょっと明るい。
そして、お子様でもじゅうぶん読める。
でも、最後はやっぱりちょっと物悲しい。
かめらしい、物悲しさ。
やっぱり、かめはいいね。
きつねのつき
出版社が「3.11後の世に贈る、切ない感動に満ちた書き下ろし長編」と銘打ち、作者自身は「日本初の保育園送り迎えSF」と韜晦する、大災害後の世界における日常を描いたS(少し)F(不思議)でほのぼのホラーな小説。
生物兵器としてつくられた人工巨人の暴走により壊滅した街。崩壊する巨人の生体組織に街は飲み込まれ、巨人の研究員だった語り手の主人公は妻を失い、そして返してもらう。
彼が取り戻した妻は肉塊になりはてていたが、娘をそのまま宿していてやがて出産した。その後、彼女は引っ越した家の天井と同化してしまい、男と娘と妻の三人の暮らしがはじまった。
「肉の津波」に飲み込まれたはずの街は何故かそのまま存在していて、日常が続いている。彼は娘を子供館で遊ばせ、隣家の騒音に悩まされ、保育園に娘を入れられるかに気をもみ、仕事をし、お花見を楽しみにする。しかし、彼には理解できている。この世界が以前と同じモノではないという事が。何かが喪われてしまったという事が。
街ではヒトではないモノが日常を演ずる如く、少しだけ舞台裏をのぞけばたちまち異形のモノが蠢く世界。主人公は淡々とそんな世界を受け入れる。彼自身も、もはやヒトではない。街の外から「取材」と称してやってきたテレビの下請けの人間に彼は問いかける。「あんたたちには、どんなふうに見えてるんだ。私たち、いや、このあたり一帯は」と。
あの日、以来。世界が、何かが変わってしまったような気がする。それでも、私たちは生きている限りこうして日を過ごし、「とにかく、ここにこうしている。」喪われた何かを愛惜し、まだここにある何ものかを大切にする。これはそうした、未来に開かれた物語。
(蛇足)それにしても、幼児ってのはそんなにセンスオブワンダーなのでしょうか。子供のいない私には理解しようもありませんが。