Eclectic
音楽性、及び彼の声質の大胆な変化が取り沙汰された問題作。が、最後のリリースから5年もの歳月がながれ、生活環境がガラリと変わり、今までの彼の音楽作りに必要不可欠だったスタッフ(スカパラ、SDP等)もいない状況で今、彼にとって今一番、自然で率直なものを表現して見せたのがこのアルバムなのである。一応、冷静に分析してみると、今作は現在、アメリカで流行しているようなR&Bとも、それを安直に模倣しただけの和製R&Bとも異なる仕上がりだと思う。BGMにするには、ちょっと重く、かといって本場のR&Bが持つような下世話なエロスではなく妙に禁欲的なトーンで貫かれている辺りが、ちょっとSADEあたりに近いものを感じた。打ち込みの技術や、コンテンポラリー且つ、アダルトな音作りの完成度は、かつての過去のアルバムを含めても出色の出来かも知れない。装いも新たに生まれ変わった、あまりにも美しい名曲8や新曲3なんて新たなるアンセムになりそうな予感あり。が、やはり、歌謡曲や70年代ソウルを縦横無尽に組み合わせることによって作り上げた、あの甘酸っぱい折衷ソウル(あれらこそがある意味Eclecticだったのでは?)が無性に懐かしくなってしまうのも事実。もっと長い歳月寝かせてから聞き込むことによってこれから、このアルバムの真価がさらに表れてくるような気がする・・・としか今は言えないです。☆は完成度を考慮して文句なく五つ。