横道世之介
吉田修一の本をずっと読んでいて、
作風の幅広さに魅了されつつ、
ときどき「?」という作品もあったりするので
「どうかなー」と思いつつ読んでみましたが、
意外や意外。あらすじだけでは分からないこの面白さ。
ある意味、著者の過去最高作品なのではないでしょうか。
世之介くんは、田舎出で上京したての大学生で
容姿がすばぬけていいとか、お金持ちとか、頭脳明晰とか、
バックグラウンドに恵まれた男の子ではないかもしれないけど
変な魅力があって、その漠然とした魅力を
こんなにも筆を積み重ねて書いたその筆力が
吉田修一ならではだなぁ、と舌を巻きました。
そして、何よりも自分が胸を打たれたのは
世之介くんのガールフレンドだった
祥子さんの「その後」でした。
彼とのとある経験が、彼女の人生にこんなにも
影響を与えるなんてと、読み進むほどに
万感の思いがこみ上げてきました。
大学時代を振り返ると、みんな世之介くんだったような気がするし、
自分もまたそんな一人だったかもしれないと、
そんな懐かしさとやさしさが
読み終わったあとにジワジワとこみ上げてくる一冊です。
2009年にこの本を読めて、すごく良かったです。
世之介くん、ありがとう。
NOCTURNE No.9
1.NOCTURNE No.9
2.グレイト・エスケイプ
3.NOCTURNE No.9(Instrumental)
4.グレイト・エスケイプ(Instrumental)
このnewシングルは布袋の流れるよなソロがいい味をだしていて布袋ならではの歌詞(人生を歌っている)
本当にこの曲を聞かないとやばいです!!!!!
平成猿蟹合戦図
吉田修一氏は、最高の小説家の一人であると思っていましたが、少々残念な終わり方です。
前半は、歌舞伎町に生きる人々や上京してきた人の心情や人間関係を見事に描き切っており、凄いなあ、と感心しましたが、後半の元バーテンが選挙に出るあたりで作り話っぽい感じになってきて残念です。
地方議会等で、政治について考えてことがないような人(馬鹿っぽい人)が立候補していることを持ち上げる風潮があるような気がしますが、そういうのに、吉田修一氏が迎合しているようで、悲しくなります。
もっと厳しい目で現実の社会や人を描いてほしいと思います。
SWITCH vol.28 No.3(スイッチ2010年3月号)特集:東京事変[運動的音楽論]
シャネルを着こなし、フェンシングの剣をもった林檎さんが素敵で
アルバム「スポーツ」の製作中の林檎さんの姿の描写や
メンバー全員分のインタビューもあり
内容がかなり濃いものになっているので
事変のファンの方なら購入して損はないと思います。
また、林檎さんが描かれた大変可愛らしい絵が掲載されていたのも
個人的にとても嬉しかったです。
あの空の下で (集英社文庫)
飛行機の旅は、チェックインだパスポートコントロールだ、やれ靴を脱げだジャケットを脱げだといわれとばたばたと50,100とあるゲートから自分のゲートへ向かい、席にたどり着くまで、ただの移動であるのに、なんだか大変で不自由である。仕事がらみでのフライトであれば緊張しているし、家族を案じてフライトする事もある。
飛行機に乗っても、やれモバイルは消しなさい、荷物、そこはだめ、コンピューターはまだ使ってはいけませんといった指示に神妙に従っているしかない。
そんなときに、心ほぐされるのが結構機内誌なのである。
その機内誌での連載をのせたこの本。吉田の書く一つ一つの短編は、かりかりした気分をさらりとかわすかのようにあくまでも程よくライトなタッチで書かれてよい。しかも、ライトなタッチであっても一つ一つの作品に、しっかりとメッセージがあり、胸がじんとする。それが吉田修一の才能なのである。
多くの短編の中でも、私のお気に入りは、”東京画”。学生時代からの友情が時と環境によって関係がかわってくる話だ。“親友かといわれれば、堂々と「そうだ」とうなずけない所もあるが、......二人揃って「まさかこんな奴と」と、堂々と否定できるくらいきっと親友だったのである”。この作品には、学生から大昔学生だったそれぞれの読者がきっと、ほんの一時、時を超えさせる力がある。
エッセイでは台北での旅がよい。地元のおばちゃんが言葉の違い等におかまいなしに、“口が汚れているから拭いていきなさい”を伝えようとする。グローバル等というまでもないような、素朴な人の優しさを感じる事ができ、感謝する作者に好感を抱く。
どの作品も、人が寂しさやふがいなさのなか生きている事を見守りつつも、時や場所を超えて届く、ひと雫ずつの愛や友情のあかしをさりげなく見せられることによって、ちょうどいいくらいに少しだけ心地よくしてくれる。