味覚極楽 (中公文庫BIBLIO)
1927年に『東京日日新聞』に連載され、光文社から単行本として出たものの復刊。本書の底本は1957年に竜星閣から出たもの。
下母沢寛が小説家として独り立ちする前、新聞記者をやっていた頃の仕事で、当時の美食家たちを訪れ、インタビューを行っている。華族、政治家、実業家、歌舞伎役者など。その話しぶりを下母沢が良く再現しており、雰囲気がある。また、竜星閣から出すに際して、インタビューした当時の思い出を書き加えている。
戦前の美食家の特異な世界がうかがえる。妙なこだわりがあったり、外遊体験が基調になっていたり。社会的地位が美食と結びつくさまも面白い。話に登場する店もだいたい決まっていて、当時の「旨い店」がほんの数軒に限られていたことが分かる。
貴重な一冊。
ICHI(7) (イブニングKC)
毎回、コミックスの発売を楽しみにしていました。
元々は綾瀬はるかさん主演映画のコミカライズですが、映画は未見です。
1巻の表紙が美しかったのと、盲目の女剣士と言う設定に惹かれて読み始めました。
最初は映画の宣伝の一貫だろうと、失礼ながらもそんなに期待しておらず…。
ところが、この漫画は映画とはまた全くの別物。
映画のあらすじは番宣で知っていたので、展開の違いや意外な登場人物に、読み始めた頃には少し驚きました。
絵も綺麗で話にはオリジナリティがあるし、構成もしっかりしていて、史実に絡めた展開には味があり、続きが気になる!
そんなワクワクする漫画だったのですが、無念な形の最終回に…。
単行本派のため本誌は読んでおらず、6巻の次回予告で「最終回」とあったのを見て「え、終わり!?まとまるのだろうか…」と不安でしたが、案の定…。
コミックスの売れ行きが悪かったからでしょうか?
近所の書店では、1巻発売当初は普通に積まれていたのですが、途中の巻あたりから発売日なのにどこにも入荷が無く、毎回探すのに大変苦労しました。
(自分の住んでいる地域だけかもしれませんが)
または、作者の方がご病気でやむを得ずとか…。
何か事情があって、構想はあるのに中途半端に終わるしかなかったのでは…と邪推してしまうような結末でした。
映画終了後の数年間も連載が続いただけでも満足すべきでしょうか…。
それでも、はられていた多くの伏線が気になって仕方ありません。
すごく面白い作品だったのに、本当に勿体ない。
しかし、それでも最後は爽やかで希望のある終わり方でした。
作品自体は星5つ。
もっとこの物語を読みたかった…!
新選組始末記 (中公文庫)
池田屋事変は、
映画やテレビで見たことはあっても、
実際なんのためにどのようにして起こったのか
理解していなかったのですが、
この本で初めてなるほどと思いました。
生々しい死闘の描写や、
池田屋の主人のその後などが書かれています。
新選組三部作 新選組遺聞 (中公文庫)
倒幕派の清川八郎の策動から始まる新選組の顛末全般を描いた前作「始末記」に対して、「壬生の屯所」「池田屋事変」「近藤勇の最後」他にテーマを絞った生々しい取材記録。
池田屋事変の報告書ともいえる近藤勇の手紙が掲載され、大事をやりとげた後の興奮と、浪人集団という世間の評価を払拭できるかもしれない希望が伺えました。 近藤勇も、喜びと苦悩を繰り返す私達と同じ人間なのだと実感できます。
著者自身が「記憶(事実)に対して誤りがないとは言えない。」と書いてはいますが、十分に貴重な「哀しい歴史資料」です。