羊の木(1) (イブニングKC)
凶悪事件の元受刑者11人を彼等の更生と過疎に悩む市の活性化モデルとして受け入れた魚深市。
彼らの前歴を知るのは市長鳥原と彼の友人月末、大塚の3名のみ、と言う政府主導による極秘プロジェクトですが何れ劣らぬ曲者揃いの新市民達、1巻ではまだまだ導入部ですが、原作の山上氏と作画のいがらし氏のコンビは予想以上にシックリきており、実に面白い作品となっています。
生身の人間と言うのは漫画内の記号化されたキャラに比べ当然のことながら大変生々しい物ですが、常人ですらそうなのに、犯した罪の業深さと共に描かれる一癖二癖も有る元受刑者が、実際隣に座り息づく時の生理的な違和感が、主導者メンバーの島原市長、月末、大塚らを通じて読む物にヒシヒシと伝わってくる感覚は他に類を見ません。
この巻で振られた伏線、互いの存在を知らない筈の受刑者同士が吸い寄せられるように祭のボランティアに集合して来る様子、自分たちの過去を市が秘密にしておきたい事に気付いて市長に映画「ケープ・フィア」のケイティ風プレッシャーをかけ始める者が現れる等、人間の建前と本音にどぎついギャグを持って切りこんで来た両氏の才能がどんどん発揮されて来て、次巻が楽しみで仕様がありません。
個人的には、当初計画にビビっていた月末が、元受刑者の強烈な個性に晒される内に妙な方向へ肝が据わって行く描写と、いがらし氏の傑作「のぼるくんたち」の絶倫男、梅本嘉十郎がスターシステムで武満義人と名を変えての再登場が嬉しかったです。
この漫画が元受刑者の更生を感動的に描く作品では無い事は明らかですし、ヒトの生理に訴えかける点が多いので、拒否反応を示す方もいらっしゃるかと思いますが、お薦めです。
特典として巻末に山上氏といがらし氏の実に興味深い対談が掲載されています。
赤塚不二夫のまんがNo.1シングルズ・スペシャル・エディション
テープの音源がなかったのか、ソノシートからのリマスタリングのようで、プチプチノイズが少し入っています。
でも、これが聴けるなので、すごすぎ!
井上陽水の「桜三月散歩道」が聴きたかったのだけど、他の曲も、すごくいいです。
火床より出でて (小学館文庫)
本書をはじめ、この人の小説は読んでいるうちにどうしてもセリフが山上漫画のキャラで
脳内再生されてしまう。商店街のおやじとか若奥さんなどが、緻密な背景とともに浮かんでくる。
個人的にはものすごく映像的な小説家の一人。
漫画の「中春こまわり君」も最近は地方を舞台にしたミステリー仕立てになってきており、
山上氏がなんかのインタビューで「松本清張が好き」と語っていたのを思い出した。昔の
「がきデカ」の扉絵も連載後半は地方の風景(日本海側や北海道など寒そうなとこが多かった)
をバックにこまわり君がポーズとっているパターンが増えてきたのもそのせいらしい。