定年延長再雇用制度事例集―高年齢者を活かす12社の取り組み (ニュー人事シリーズ)
これから検討する者にとって非常に参考になる。相当以前に話題性が高かった問題であるが、生産年齢層が急速に減少する今こそ真剣に取り組むべき課題ではないかと考えられる。
自販機の時代―“7兆円の売り子”を育てた男たちの話
戦後日本における自動販売機市場の盛衰史だ。
「日本全国にある自動販売機の数は五百五十万台余り。米国に次ぐ数である。人口一人当たりでは米国の二倍、世界一の不普及率」。
自動販売機の「総販売額は年間約七兆円」で「コンビニエンスストアの売り上げとほぼ同じ」、「デパートの売上総額に迫るもの」。そして「その中身の四割は飲料が占め、タバコが二八%、乗車券や入場料が二五%」
こうした数字だけを追うだけでも充分興味深い。
“自社技術へのこだわり”といった、ある種「プロジェクトX」的な、きれいなストーリーを持たない富士電機が、業界トップに躍り出たっていうあたりの機微も面白い。自販機自体っていうよりは自販機市場に名を刻んだ「会社」と「人」にスポットをあてている。これはこれで一冊の本になる分量だし、自販機市場のフレームもよく理解できる。
一方で、ちょっと食い足りないっていうか、ますます興味が沸いちゃった点が自販機自体の特殊性って部分。副題に“7兆円の売り子”ってあるけど、自販機って店員であり店舗でありバックヤードであり保冷庫であり、流通をすっ飛ばしたチャネルってことではネットマーケの登場するずっと前からある訳だしね。買う側からすると、人を介すわずらわしさがないって点において、ネットで物を選ぶ感覚って、自販機で体験済みなんだよね。そこらへんの社会学的、心理学的な見地からの自販機研究なんてのも面白いアプローチなんじゃないだろうか。あと、瓶、紙コップ、缶、ペットとかホット/コールドとか大型化、スリム化、多品種化に対応するメカニズムの部分ってのも相当面白いよね。子供の頃、デパ屋で目にした噴水型ジュース自販機なんていまだに脳裏に焼きついてるもんな。まぁ一冊の本で諸々の好奇心を満たすってのは無理がある訳で、この本を起点にちょっと自販機に興味持っちゃった、そんなきっかけを与えてくれるには充分の本である。