普天間の謎―基地返還問題迷走15年の総て
複雑かつ重要な「普天間基地問題」について、
その核心を把握するに必要な、
「歴史」「軍事」「政治」
を通じ、総合的視点から国民を啓蒙する書は存在しませんでした。
本著をもって嚆矢とします。
特筆すべきは、
・綿密な取材が行われており登場人物名はすべて具体名。仮名やふせ名はなく、
内容への信頼度が高い。
・問題理解の上で不可欠な在沖米軍の詳細データ、部隊運用の常識、地政学的視点が
防大出身、元空自将校だった著者を通じ余すところなく記されている
・政治的複雑さを有する普天間問題の経緯・歴史記述が、わかりやすく記されている。
・沖縄で何が起きていたのか、がよくわかる。なかでも沖縄の指導者たちが示してきた
国防、安保への覚悟、日本国に貢献する姿勢が詳細に記されている。
・わが政治指導部がこの十五年、本件でどういう動きをしていたかがつかめる
・付録で詳細な年表がついている
といったところです。
こういった内容が有機的に統合され、十分な発酵がなされた結果、
読みやすくて滋養あふれる、画期的な「普天間(沖縄の米軍)基地問題」啓蒙書に
仕上がった感を持ちます。
これから先、普天間問題を口にする際は絶対に欠かすことのできない基本書に
なることでしょう。古典としての価値ある内容と思います。
これ一冊あれば、普天間問題に関するすべてが把握できるといって過言ではありま
せん。
南極越冬隊 タロジロの真実 (小学館文庫)
作者は1957年の第一越冬隊、そして59年の第三次越冬隊に
犬係として参加をした北村泰一氏。
題名には「タロジロの真実」と書かれていますが、
そこにスコープされたものではなく、
日本人として初めて過酷な冬と戦いつつも、
まさに前人未到の冒険をなしとげた人々の日常が、
耽々と描かれえています。
ただ、その耽々がすごい!
真冬の南極の地を、まだ誰も行ったことが地域を調査するため、
基地から飛び出し、さらに南極大陸の旅に赴く作者。
その中で気温マイナス10度だと温かいという。
そんな過酷な自然の中で、人もそして犬たちも、
夢の冒険を果たし、そして「生きる」ために闘った日々。
第一次越冬隊がどうして犬たちを連れて帰れなかったのか・・・
それについてもここでは詳しく語られています。
今の世の中いろいろなことがとっても便利になり、
情報社会の中、未知のものもかなり少なくなってきています。
がそれと同時に、人をこころから突き動かす夢も少なくなってきている気がします。
でも今から50数年前にはそんな夢があり、
一人の若者がそれに挑戦をしたそんな証が綴られている一冊です。
面白南極料理人 (新潮文庫)
南極と言う題材で思わず手に取ってしまいましたが、標高3800m、マイナス50度以下
が当たり前と言う世界は、常人では当然経験しようがなく、そのおかれた環境の異質
さで、熱心に読んでしまいました。
ただ、作者の西村氏は本職の文筆家ではないので、読み物として考えると、構成含め
しんどい部分は多々あります・・・
その辺を許容でき、自らの知らない世界を知りたいと言う方にはお勧めだと思います。
私は著者の悪文には辟易としながらも、マイナス50度以下の世界の生活はやはり魅力
的で、結局最後まで読んでしまいました。
と言う意味ではお勧めなのかな?
吉田茂の自問―敗戦、そして報告書「日本外交の過誤」
吉田首相が、当時の政務局政務課長に指示し、
課長クラスが議論の上、まとめあげた著作。
満州事変、WWIIなどを日本の外交の失敗と認め、
その事態に陥った理由を分析し、
後世のためにまとめられたもの。
現在の官庁ばかりでなく、日本の組織においても
このように過去の失敗を冷静に受け止め
分析し、後世に伝えるということが
大変難しくなっているように思われる。
現在の日本がうまくいかない理由は
過去の事実を冷静に受け止め、
次につなげていないからなのではないだろうか。